「婚約者の友人」:玉虫色のモノクローム
映画『婚約者の友人』は、エルンスト・ルビッチの作品をフランソワ・オゾンがリメイクしたそうです。そのルビッチ作品は未見ですが、今回の作品自体があたかも昔作られた名作のような「擬態」をまとっていて、そこらへんの曲者感がやっぱりオゾンだよなという感懐を抱きました。モノクロ映像の質が、やけに昔っぽいのです。
(以降少々ネタバレあり) 序盤から最後まで、ずーっと謎を孕んだまま進行します(っていうか、観終わっても謎が残ったままと言う気もいたします)。だけど、ミステリーってわけじゃない。純文学的に香り高い物語にも見えますが、あくまでも娯楽作って言われればそんな気もする。ゲイの雰囲気を漂わせつつ、最後まではっきりそうとは描かない。などなど、どうにもはっきりしない、はっきりさせない、玉虫色の作品なのです(だいたいモノクロだけど)。
でも、そもそも序盤に感じたテイストよりは、ずっと素直に進行しました。もっと意地の悪い、エグ味のある作品なのだろうと思っていたのです。ここまで「まじめ」とは!って作品ですよね、むしろ。人の心に迫っていきました。
でも正直ラストは、なんだかよくわかんかかったですねー。この作品最大のミステリーだったりします。
そして終盤のドイツ→フランスへの移動を通じて、一方の正義はもう一方の正義ではないこと、物事は視点の置き方によって正反対に見えることが浮かび上がって来ます。そのあたりが普遍的かつ今日的でもあります。
主演男優のピエール・ニネは、あのサンローランを演じた人だったんですね! 今回は妙に中性的な雰囲気を醸して、ミステリアスでした。
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