「リミット・オブ・スリーピング ビューティー」:映像の魔術師
映画『THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY リミット・オブ・スリーピング・ビューティー』は、あの怪作『MATSUMOTO TRIBE』の二宮健監督(25歳!)による、最高にクールでファンタスティックでイカした映像作品。前年とはうって変わって、今年の邦画は本当に不作で、これじゃベストワンに置ける作品が無い!と憂いていた大江戸にとって、干天の慈雨のごとき作品です。好き嫌いが分かれる作品だと思いますが、大江戸はこういうの大好きなのです。
まずもってパープルやオレンジやピンクを基調にした美しい映像が良いではありませんか。好きなトーン、好きなルックです。短めのカットとたたみかける編集も好きですね。
そして二宮監督がきっと映画ファンなのでしょう。数多くの先達へのオマージュ; アイズ・ワイド・シャット、ケン・ラッセル、鈴木清順、実相寺昭雄、キングスメン、灰とダイヤモンド、アンチポルノ(園子温)などという固有名詞が浮かんでは消えて行きます。
とにかく主演の桜井ユキが輝いています。結構そこらにいそうな感じなのに目が離せないというか、平凡の中の非凡を体現しております。モデルっぽいというか、女優っぽくない匂いもありますが、純然たる女優さんのようです。もう30歳ってのも(若く見えるだけに)驚きですが、注目株には違いありません。 本作での彼女って、なぜか高橋一生にかなり似て見えることが多いんですよね。意図的なものではなさそうなだけに、不思議です。
1時間29分、画面を観ていることがとにかく快感な映画でした。そして、途中からこの作品に恋をしたかのようにドキドキしていました。 完璧ではありません。正直なところ瑕疵はあります。でも、昨今のメジャー日本映画界でこういうの作ってくれる人っていないじゃないですか。遡れば、’60年代、’70年代にはいたわけですよ(清順さんとか、実相寺さんとか・・・)。だから今こんなことをやってくれている二宮健という才能を支持します。エールを送りたいと思うのです。大胆な色遣い、ぶっ飛びの奇想とエロス、破天荒なアクション、・・・うーん、やっぱり新時代の清順と呼びたい気がします。映像の魔術師なのです。
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