「ブレードランナー2049」:絵と音と雰囲気の見事さ
映画『ブレードランナー2049』は、前作('82)の35年後に作られた堂々たる続編。 絵がスゴイ!音がスゴイ!金のかけ方がスゴイ! 映画の「格」として、あの伝説のリドリー・スコット作品に一歩も引けを取っていません。いや、むしろアート的純度はこちらの方が上で、そこらが今やクリストファー・ノーランと東西の横綱を張るドゥニ・ヴィルヌーヴだけのことはあるのであります。
ノーランの『ダンケルク』も、巨費を費やした壮大なアート・フィルムだとか言われましたが、この作品も同様です。それができちゃうってのが、今のノーランやヴィルヌーヴの勢いであり、実力と言うこともできるでしょう。興行的に不利な2時間43分という長さを押し通せちゃうってことも、その「力」の成せる業であります。それにしても、この美術の凄さと隅々までの完璧さ、そして哲学性には、キューブリックを比較対象に持ち出したくなるほどなのです。
前作の未来世界像の発展形を見ることが出来るのも、非常にうれしいところです。英語、日本語、韓国語、中国語、その他の言語が入り乱れ、ホログラム広告と昔ながらのネオンが同居する街を空飛ぶ自動車が滑空する世界。多くのフォロワーを生み、その後の未来SFをガラリと変えてしまった前作ですが、本作はやはりさすがなのです。正統な嫡子というか、「本家」って感じなのです。大江戸はそれほど前作のファンってわけでもないのですが、期待を裏切らないというか、むしろその上を行くレベルだってのは、嬉しいことです。
時間をたっぷり使って、ゆったりと進行しますが、そんなに長い感じはしませんでした。むしろ画面にひたれることが気持ち良いのです。見続けることが苦痛ではない、素晴らしいクォリティの映像です(撮影=ロジャー・ディーキンス!)。 そしてハンス・ジマー(!)、ベンジャミン・ウォルフィッシュによる音楽も、十分前作のヴァンゲリスに対抗できるもの。あのパワフルな「ブォー!」は見事に効いています。
ただ、このしんねりむっつりした「ブレードランナー」感覚は特に小生の好みではありません。ハードボイルド風味の無常観としては、前作の方が上かも知れませんね。まあ、本作のワビサビ的な寂寞テイストも大したものだとは思いますけど。実際、ラストの雪中ゴズリングは、画面に俳句がかぶさってもおかしくないような雰囲気なのでありました。
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