「女神の見えざる手」:過剰な主人公、緻密な娯楽作
映画『女神の見えざる手』は、めっぽう面白かったです! ロビイストを主人公にした、アメリカの銃規制問題をめぐる密度の高いポリティカル・フィクションなのですが、脚本も演出も見事としか言いようがありません。この脚本家(ジョナサン・ペレラ)はなんと初の脚本、初の映画なのだとか! それでこの緻密さには、驚愕しかありません。 監督はジョン・マッデンで、こちらも彼の最高作では?と思わせるものでした。
(以降少々ネタバレあり) 緊迫感溢れる展開で、善悪入り乱れながら二転三転して、どんでん返しもあって、いやー、知的な娯楽映画としては最良の出来栄えです。帰り道にそばを歩いていた女性の二人連れ客が興奮気味に「面白かった!」と、この映画の話をしていました。しかも二組も。なかなか無いことです。
なのに、東京では2館のみという公開規模。あんなにつまらない○○○が、東京だけで何十スクリーンもの拡大公開なのに・・・(○○○には各自で選んだ作品名を入れましょう)。悪貨が良貨を駆逐するとでも申しましょうか、まったく憂慮すべき事態であります。
この共感度ゼロでアクの強さ100%のモーレツ・バリキャリ主人公を演じるのが、ジェシカ・チャスティン。どうしてアメリカって、こういう「トゥー・マッチな人」を生んじゃう土壌があるのでしょうかねえ。「程よく」とか「中庸」とか「折り合い」とかっていう概念がないんですよね。農耕民族と狩猟民族の違いでしょうか? でも、ジェシカはお見事。名演に近い領域です。
そして「かっこいいハゲ」界の最右翼=マーク・ストロングが、本作でもまた知的で抑制が効いた大人でイケてました。この人、スタンリー・トゥッチとどっちだっけ?といつも思っちゃうんですよねえ。
銃規制の良し悪しに関しては、たぶん意図的にニュートラルなスタンスを取っています。そのために、ポリティカルな意義は薄れ、エンタテインメントとしての上出来さが浮かび上がります。そこを物足りなく感じる向きもあるかも知れませんが、大江戸はそういうスタンスの支持派です。そして面白い映画の支持派として、本作をお勧めします。
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コメント
2度目も、面白かったです!
投稿: onscreen | 2018年5月13日 (日) 17時56分
でしょうねえ!
投稿: 大江戸時夫 | 2018年5月13日 (日) 20時52分