「予兆 散歩する侵略者」:A面よりよく出来たB面
映画『予兆 散歩する侵略者』は、9月に公開された『散歩する侵略者』からのスピンオフ企画。あの事件と同じ頃に、別の場所ではこんな事が起きてましたっていうお話。WOWOWがドラマ化(全5話)したものを140分に編集して劇場公開した作品です。 これだけよく出来た黒沢清監督作品なのに、都内1館のみの2週間限定という公開規模の小ささが(しかも2週目は1日1回のみだし)誠に残念です。
だって、とても良い出来なんです。正直言って、本家『散歩する侵略者』よりも黒沢清らしさに溢れてますし、本家よりも無理なく面白いのです。小生はこっちの方が、やや好きですね。 脚本は黒沢&高橋洋なだけに、侵略SFのみならず「恐怖映画」のテイストが色濃く出ております。
オープニングから全編を通して、カーテンは揺れ、風は吹き渡り、黒沢らしい不穏な空気が画面に溢れています。
メインキャストはほぼ3人なのですが、男二人(染谷将太、東出昌大)は『寄生獣』コンビ。しかも今回も東出は無表情で怪しいもののけ感たっぷりですし、染谷はまたもや右手の異常に悩まされます。これって「狙った」キャスティングですよねえ。ほとんど笑えちゃいました。
そして夏帆は、柄に合った役で好演です! 一頃は清純派からの脱皮を図って、妙なセクシー路線に走っておりましたが、ここに来てキャラ違いを無理にやっても意味がないと判断したのか、『22年目の告白 私が殺人犯です』、TV『監獄のお姫さま』、そして本作と、従来の夏帆の延長線上の役に戻って来ました。これでいいんです! 本作でも薄幸顔と涙袋を生かして、悲哀と絶望を見事に表現しておりました。
終盤になると本家同様、差別をする人類、戦争をする人類、殺し合う人類への警句的な台詞が語られます。そこらへん、やはりタイムリーな作品です。そして、愛と終末観。これも本家と一緒ですね。 同じ物語のA面/B面として、よく出来ていると思います(A面/B面っていう言い方って、ひょっとして死語ですか?)。
(本家『散歩する侵略者』の当ブログ記事はこちら↓)
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