「希望のかなた」:カウリスマキの描く難民
映画『希望のかなた』は、まごう方なきアキ・カウリスマキ映画。社会の片隅の不遇な人々を、ユーモアで慈しみながら淡々と描写していきます。人情味たっぷりながら、社会へのメッセージをしっかりと打ち出しています。
今回もやはり色調がいいですね。寒色フィルターを通して、暖色系を描いたような独自のトーン。ちょっと画家ミヒャエル・ゾーヴァ作品のトーンにも似ています。
サイレント映画を思わせる静けさと、オフビートな笑いはいつも通り。まあ一番笑えたのは、レストランをスシ屋に業態変更する素っ頓狂なエピソード。珍妙な日本趣味と、惨憺たるスシもどき(メガ盛りのワサビ)! 作品全体のバランスを崩してまでもあんな場面を入れちゃうところが、カウリスマキなんですよねえ。そういえば、カウリスマキは親交のあるクレイジーケンバンドのギタリスト小野瀬雅生(のっさん)に『もっとワサビ』という名の曲を作らせて、それを『過去のない男』で使っている人ですから。
この『希望のかなた』にもミュージシャンの演奏シーンがあるのですが、いつかのっさんにもカウリスマキ映画内で演奏を見せてもらいたいものです。それにしても、このスシ・レストランの店員の衣装やら何やら、大昔の「国辱映画」かよって感じですが、日本通のカウリスマキですから、きっとわざとやってるんでしょうねえ。
(以降ネタバレあり) 希望があるんだかないんだか、なかなかに辛口のラストを迎えるのですが、なぜハッピーエンドじゃないのかといえば、そこにカウリスマキの難民問題への怒りがあるからなのでしょう。
それにしても、出て来るフィンランド人がみんな武骨でダイハードな面構えですね。全てのフィンランド人がそうだってことはないのでしょうけれど、ついそうだと誤解してしまいそうになるのです。
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コメント
寿司屋のシーンは爆笑でした!
「難民3部作」の第3作も楽しみですね!
投稿: onscreen | 2017年12月17日 (日) 12時52分
onscreenさん、コメントありがとうございます。
あれ、いったいどんな味がしたんでしょうね? 食べてみたいような見たくないような・・・。
投稿: 大江戸時夫 | 2017年12月17日 (日) 20時57分