「MR. LONG ミスター・ロン」:バイオレントだけどリリカルでセンチメンタル
映画『MR. LONG ミスター・ロン』は、SABU久々の良作。現代日本(と台湾)を舞台にした“西部劇”です。まるで『シェーン』あたりの感覚ですもんね。いや、いい意味で。そして相変わらず疾走場面があって、そこが生き生きと映画の力になっているのです。ここのところ不振だったSABUの復活お言えるような出来です。
極めて映画的な「いい絵」が撮れてます(撮影=古屋幸一)。そして極めて映画的な、つまり映画史の中で何度も語られてきたような物語の寄せ集めです。でも、良いものは良いのです。娯楽映画って、そういうもんです。通俗の中にこそ、普遍的なパワーが存在するのです。
クールなチャン・チェンの良さは言うまでもありませんが、薄幸の美女リリー役のイレブン・ヤオが実に素敵です。壮絶なシャブ中演技と、キュートで慈愛に満ちた笑顔との振れ幅! この人、日本には初お目見えではないかと思うのですが、これからの活躍に期待してしまいます。
バイオレンスとリリカルなセンチメンタリズムが両立している本作ではありますが、まあもともとSABUってそういう人でしたね。 多少の中だるみや、脚本のアラはあるのですが、決して嫌いにはなれない魅力をもった作品となっておりました。SABU作品の中では、『ポストマン・ブルース』『うさぎドロップ』と並んで大好きです。
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