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2018年1月10日 (水)

「ジャコメッティ 最後の肖像」:かばいきれないろくでなし

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映画『ジャコメッティ 最後の肖像』は、あのマーク・ストロングと間違えやすいボールドヘッドのスタンリー・トゥッチによる初監督作品(脚本も)。彼自身は出演せず、大真面目で監督業に徹しています。そして完成した作品は、極めて抑制の効いた(作家的主張を抑えた)及第点の職人仕事でした。コンパクトに90分にまとめたあたりも、新人らしくって好感が持てます。

 

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数時間で終わるという言葉に乗せられて肖像画のモデルを引き受けたら、1週間たっても十日たってもいっこうに終わらないという、極めてカフカ的な状況。そんな状況下の芸術家とモデルを描いただけの映画です。シンプルきわまりないお話。そして、映画的にも室内が多く、見せ場や起伏にも乏しく、盛り上げようがない作品です。まあ、20世紀美術好きの大江戸としては、結構おもしろく観ておりましたけど。

 

それにしても、天才芸術家ってやつは困ったもんです。
他人のことなどこれっぽっちも考えず、気まぐれで、常識はずれなろくでなし。あまりお近づきにはなりたくない感じですね。 この映画は、そんなゲージツ家のろくでなしな面をあれこれ描いたものの、その作品の素晴らしさやアートとしての圧倒的な凄さ
について、ほとんど描いていないのが欠点です。その両面を描かないと、限りなく「ただのろくでなし」になってしまいますからねえ。

 

まあジェフリー・ラッシュがうまいのは当たり前ですけど、モデル役のアーミー・ハマーも無表情な中に結構いい味を出しておりました。

 

そして本作のラストも、急にエスプリの効いた小粋な味わいを出してくれました。もっとこういしなやかさが全編に出てたらなあ・・・。

 

 

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