「アバウト・レイ 16歳の決断」:今という時代の証言
映画『アバウト・レイ 16歳の決断』の原題は“3 Generations”=三世代。祖母=スーザン・サランドン、母=ナオミ・ワッツ、娘(息子)=エル・ファニングという、ほとんど血のつながりが感じられない3人ですが、大江戸のごひいき女優の揃い踏みでもあるのです。いやー、大好きな女優が3人主役って映画は、これまで6,000本ぐらい映画を観て来てもほとんど初めてかもしれないってぐらい珍しいことです。
とはいえ、スーザンおばあちゃんはスパイスの効いた脇役といった感じ(いい味ですが)なので、焦点はトランスジェンダーの16歳エルと、その母ナオミに当たっていきます。エルは男の子のしゃべり方やしぐさや顔つきから腋毛(特殊メイクか?)まで、覚悟の演技を見せていきます。 ナオミは複雑な事態に立ち向かう母の心の揺れや深い愛情を繊細に演じ切ります。 三世代の演技合戦でもあるのです。
「時代の証言」みたいな映画でもあります。ようやく時代はここまで進んだ、でもあり、まだこのように受け入れられず、みんなが葛藤していた時代だった、でもあるのです。 何十年かたった時に社会学的な価値が出る作品と言うか・・・。
女性監督ゲイビー・デラルは脚本とプロデューサーも手掛け、ドロシー・バーウィンと言う女性も、プロデューサーの一人です。ことほど左様に女性中心の映画でもあるので、ナオミの元夫とかマシューおじさんとか、男どもは分が悪い感じです。まあ、しょうがないですね。そこらも「時代の証言」であります。
(以降ややネタバレあり) なかなか辛口のお話ではあるのですが、ラストのやさしさ、暖かさに救われます。軽く感動できるような、チャーミングなラストなのでした。
| 固定リンク
コメント