「犬猿」:兄弟姉妹は選べない

映画『犬猿』は、吉田恵輔監督(脚本も)らしくシニカルに奥底まで人間を見つめた作品。とっても笑える上出来なコメディーでありながら、シリアスな人間ドラマであり、一触即発のサスペンスだったりもして、でもハートに迫る家族愛の物語かと思ったら、・・・やっぱり吉田恵輔なのでした。大江戸はかなり好きです、この監督。吉田は、大八よりも恵輔です。

いつも役者を生かすのがうまい吉田監督ですが、本作でも窪田正孝、新井浩文の兄弟と、江上敬子(ニッチェ)、筧美和子の姉妹が最高にキャラが立ちまくり、また絶妙のコンビネーションで、映画を転がしていきます。とにかく面白くって、ぐいぐい引き込まれます。
新井のお得意の悪人オーラが凄いし、対する窪田のオドオドした小心ぶりもリアルです。でもこの映画に関しては、江上、筧の姉妹の凄さでしょう。

江上敬子がその「柄」に加えて、ちゃんとした演技者としての迫真の芝居を見せていたのに驚きました。微妙に芸人としての陳腐な芝居が顔を出しそうになる直前で、吉田監督が抑制していった感じがします。 筧美和子は、本人を思わせるような役柄(失礼!)を、これまたきっちりと演技しており、悪くなかったです。ただ怒る芝居は、4人の中で一番迫力不足ではありましたけどね。
まあとにかくラストが示すように(ポスターなどのビジュアルも示しているように)、「顔」の映画でもあるのでした。4人それぞれの面構え、なかなか見事なもんでしたよ。そもそもあのラストも、一筋縄ではいきませんでしたしね。
コンプレックスに関するえぐい考察の映画であり、更には兄弟(姉妹)って面倒くさい、肉親だからこそ面倒くさいってことを、吉田恵輔流のブラックユーモアで描きました。大江戸はやっぱり好きです、この監督。
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