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2018年2月 4日 (日)

「スリ-・ビルボード」:恩讐の彼方に

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映画『スリー・ビルボード』は、フランシス・マクド-マンドが主演でアメリカの田舎が舞台になっているぶっとんだ話ってことで、かなりコーエン兄弟っぽいテイストですよね。とはいえ、ラストに至ってようやく「あ、これって、こういう映画だったのね」とわかる作品。良い小説のような後味のラストなのです。でもこれ、マーティン・マクドナー監督のオリジナル脚本です(この人、英国演劇界の鬼才なんですってね)。

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とにかく一にも二にもフランシス・マクドーマンドを堪能するための映画です。 既に多くの主演女優賞に輝いていますが、オスカーも確実でしょう。こんな役を、哀しみと怒りとユーモアに溢れた鉄面皮のハードボイルド芝居で、スーパーリアルに訴えかけることのできる稀有な女優さんです。 彼女なかりせば成立しなかった物語だと思えてなりません。

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近年好調のウディ・ハレルソンも悪くないけれど、バカな暴力警官を演じたサム・ロックウェル、彼の演技もかなり良かったです。物語は、この人物の変化を描くことで輝きました。彼とマクドーマンドがラストで醸し出すのは、後光が射しているかのような聖なる空気なのでした。

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(以降ネタバレあり) このラストの後で、二人は怒りの鉄槌を振り下ろすことなく戻って来ると思います。 マクドナー監督が示したそれは、怒りや復讐に満ちた現在の世界へのメッセージになっているのです。あれだけ憎み合っていた二人の心が通じ合う時間。菊池寛の『恩讐の彼方に』を思いました。小説的であると同時に、上等な映画ならではの空気になっていました。この監督にはこれからも期待できそうです。

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