「デトロイト」:観るのが辛い重い球

映画『デトロイト』は、重金属系骨太映画を作り続けるキャスリン・ビグロー監督5年ぶり(アメリカ公開時)の新作。この監督、性別のことはともかく、'51年生まれの66歳なのにパワーあります。観る前から「いい作品に違いないけど、観てて気分良くはないだろうなあ。辛いだろうなあ。」と思っていた通りにしんどい、142分の重い球です。

全体の印象としては、かっちりとした強度のあるドラマ。ただ、あえて雑に動くドキュンメンタリー風のキャメラが臨場感を煽ります。モーテルでの警官の蛮行を描く40分ほどは、観てることが精神的にハードです。 (以降ネタバレあり) そして作品として容赦がないのは、決して安易なハッピーエンディングなど用意していないことです。現実の重さが観る者を押しつぶし、いつまでも考えざるを得ない状態にさせるべくそうしているのです。

それにしてもこの人種差別の悪魔のような白人警官(ウィル・ポールター)がやけに子供顔なのが、またコワイし嫌な感じです。アメリカの中学生(不良)によくいるタイプです。でも何で周りの警官とか軍とかは、あんな若造に長時間好き勝手やらせといたんですかねえ?(州兵の隊長みたいな人はヤバイと思いながら、人種問題に関わりたくないって帰っちゃうし。アフリカ系の警備員もそうですけど、現場にいた人たちって、もう少し何とかできなかったのでしょうか? もう少しうまく動けなかったのでしょうか?

結末は非常に胸クソの悪いものです。
でもこれ実話ですから。そこから半世紀、トランプの台頭に代表されるようなレイシズムの巻き返しが世界中で起こっている今、本作が登場した意義は大いにあると思います。
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監督は『ハート・ロッカー』『ゼロ・ダーク・サーティ』などのキャスリン・ビグロー。
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冒頭でこれまでの歴史が辿られる。デトロイトでの人種差別はもう一触即発のところまで来ていて、あとはいつどこで起きるかという状況だった...... [続きを読む]
受信: 2018年2月 4日 (日) 00時32分
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ディレクター目線のざっくりストーリー
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受信: 2018年2月 4日 (日) 11時02分
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絶望の夜を、生き延びろ。
「ハート・ロッカー」「ゼロ・ダーク・サーティ」と言った漢の映画で知られるキャスリン・ビグロー監督が、1967年の夏に起こったデトロイト暴動を描いた超ハードな実録ドラマ。
発砲事件の発生を受けて、現場のモーテルに突入した地元デトロイト市警の警官たちは、通常の捜査手順を無視して、容疑者となった客たちを拷問し、暴力で自白を強要しはじめる。
カオスな戦場と化した街...... [続きを読む]
受信: 2018年2月 4日 (日) 19時32分
» 「デトロイト」☆屈辱と差別を体感せよ [ノルウェー暮らし・イン・原宿]
バッドエンドの映画が好きだし、事件をスッキリと解決しない映画でも平気な私がさすがにヘコタレた映画。
救いが無い。
黒人差別を扱った映画も数多い中において、少しの希望、部分的な勝利、ちょっとだけ相手をギャフンと言わせるラストすら用意されていないのだ。... [続きを読む]
受信: 2018年2月 6日 (火) 00時24分
» デトロイト [象のロケット]
1967年、アメリカ中西部の大都市デトロイト。 デトロイト暴動から3日目の夜、若い黒人客たちで賑わうアルジェ・モーテルに、銃声を聞いたとの通報を受けた大勢の警官と州兵が殺到。 それは宿泊客の黒人青年がオモチャの銃を鳴らしただけの悪戯だったが、突入した白人警官によって彼は射殺されてしまう。 居合わせた宿泊客8名も、暴力的な尋問を受けることに…。 実話から生まれたサスペンス。... [続きを読む]
受信: 2018年2月 9日 (金) 08時24分
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