「シェイプ・オブ・ウォーター」:異形の純愛映画の新たな古典
映画『シェイプ・オブ・ウォーター』は、邦題つけるんなら『恋する半魚人』でしょうか・・・。大アマゾンのギルマンみたいな奴が、でもつぶらな瞳で結構かわいくて、まさかの幻想ミュージカル場面まで! なのに決してキワモノの怪作ではなく(それは『ゆれる人魚』)、正統派の感動作として、明日のアカデミー賞でも大本命なのでしょう。
青緑色の映画です。主人公の服から、壁からドアから水槽から水の色まで、深い青緑が支配します。それはもちろん“彼”の色でもあります。
1962年を舞台にした映画美術や衣装が見事です。ノスタルジックに美しく、古き良きアメリカを示しながら、その内包する歪みや不寛容を描き出し、それを寓話として昇華させる映画作りのマジックの源となっております。
サリー・ホーキンス(今年に入ってから、『パディントン2』と本作と『幸せの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス』と、「サリー・ホーキンス祭り」状態ですが)の芝居の見事さは、予告編の段階で感動させるほどのものでしたが、やはり見事です。 でも、ザ・悪役マイケル・シャノンの押しの強い憎々しさは近来稀に見るパワフルな悪でした。顔見るのもイヤだけど、評価せざるを得ない演技でありました。
『フランケンシュタイン』や『キングコング』から『ザ・フライ』や『美女と野獣』や『シザーハンズ』まで(ほかにもいろいろ)、映画史に数多く存在する「異形の純愛」映画の系譜に名を連ねる名作となる1本です。ファンタジーを通してでないと純愛を語りにくい時代ですから、“正統派”の香りが漂うわけです。そして、ギレルモ・デル・トロ監督は黄金期のハリウッド映画を実に良く勉強して、本作に生かしています。この展開、この描写、このドラマ・・・、古きを訪ねて新しい「クラシック」を生み出したと言えるでしょう。
TOHOシネマズ新宿で観たのですが、ロビーにはこの1月にギレルモ・デル・トロ監督が来日した時の似顔絵サインが掲げられておりました(さすがはマンガ好きです)。
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» シェイプ・オブ・ウォーター [とらちゃんのゴロゴロ日記-Blog.ver]
アマゾン奥地の原住民からは神と崇められている存在の半魚人は、もしかすると人間よりも高度な生物なのかもしれない。口の利けない女性も社会生活に支障はなく、当時の社会から受け入れられいないだけだ。これはある種のおとぎ話みたいなのだけど、人間の存在そのものを考え... [続きを読む]
受信: 2018年3月 4日 (日) 22時52分
» 映画 『シェイプ・オブ・ウォーター』★ヒタヒタに満たされる愛のファンタジー(^_-)-☆ [yutake☆イヴの《映画★一期一会》]
作品について http://cinema.pia.co.jp/title/172277/
↑あらすじ・配役はこちらを参照ください。
・イライザ: サリー・ホーキンス 40歳位?
・同僚 ゼルダ: オクタヴィア・スペンサー ←安心のおっ母さん♪
・敵 ストリックランド: マイケル・シャノン
・半魚人さん; ダグ・ジョーンズ☆
冷戦下(1962年)のアメリカ...... [続きを読む]
受信: 2018年3月 5日 (月) 00時20分
» シェイプ・オブ・ウォーター [風情☭の不安多事な冒険 Part.5]
アメリカ ファンタジー&ロマンス 監督:ギレルモ・デル・トロ 出演:サリ [続きを読む]
受信: 2018年3月 5日 (月) 08時51分
» シェイプ・オブ・ウォーター・・・・・評価額1800円 [ノラネコの呑んで観るシネマ]
水に包まれた愛のカタチ。
映画館の上のアパートに住む、声を失った孤独な女性が、政府の研究所に囚われた大アマゾンの半魚人と恋をする。
2017年度のベルリン国際映画祭金獅子賞、本年度アカデミー賞でも作品賞・監督賞ほか4部門を制した話題作だ。
サリー・ホーキンスが主人公イライザを好演、彼女と恋に落ちる半魚人の"彼"に、「ヘルボーイ」でも半魚人のエイブ・サピエンを演じていたダグ・ジョーン...... [続きを読む]
受信: 2018年3月 5日 (月) 23時00分
» 85『シェイプ・オブ・ウォーター』今の時代だからこそ [シネマ・ジャンプストリート 映画のブログ]
アカデミー賞、作品賞、監督賞受賞!
おめでとうございます!!
ギレルモ・デル・トロ監督、最新作!
『シェイプ・オブ・ウォーター』
~あらすじ~
1962年、米ソ冷戦時代のアメリカで、政府の極秘研究所の清掃員として働く孤独なイライザ(サリー・ホーキンス)は、同僚のゼルダ(オクタヴィア・スペンサー)と共に秘密の実験を目撃する。アマゾンで崇められていたという、人間ではない...... [続きを読む]
受信: 2018年3月 6日 (火) 21時13分
» 『シェイプ・オブ・ウォーター』('18初鑑賞21・劇場) [みはいる・BのB]
☆☆☆☆- (10段階評価で 8)
3月1日(木) 109シネマズHAT神戸 シアター7にて 13:20の回を鑑賞。 2D:字幕版。 [続きを読む]
受信: 2018年3月 7日 (水) 13時17分
» シェイプ・オブ・ウォーター [象のロケット]
冷戦時代の1962年、アメリカ。 声が出せない女性イライザは、政府の極秘研究所の清掃員。 清掃中、彼女はアマゾンの奥地で神のように崇められていたという不思議な生き物を見て、心を奪われる。 密かに“彼”と交流を深めたイライザは、実験室で虐待されている“彼”を何とか助けようとするが…。 ラブ・ファンタジー。 ... [続きを読む]
受信: 2018年3月 9日 (金) 10時20分
» 「シェイプ・オブ・ウォーター」☆緑色はギレルモ色 [ノルウェー暮らし・イン・原宿]
名作「パンズラビリンス」でも異彩を放っていたギレルモ監督の作品は、弱者に対する温かい眼差しと、異形の者に対する惜しみない愛が溢れ、切ないラストが忘れられないのが特徴だけれど、その異形愛が強すぎてちょっと引いてしまうのが正直なところ。
しかし今作はぐっと抑え目なビジュアルで、より共感しやすい物語になっていたyo... [続きを読む]
受信: 2018年3月10日 (土) 15時58分
» 『シェイプ・オブ・ウォーター』 [Days of Books, Films]
The Shape of Water(viewing film) 『大アマゾンの [続きを読む]
受信: 2018年3月11日 (日) 12時40分
» 「シェイプ・オブ・ウォーター」 [或る日の出来事]
マリリンの歌!? [続きを読む]
受信: 2018年3月13日 (火) 07時36分
» 映画「シェイプ・オブ・ウォーター(日本語字幕版)」 感想と採点 ※ネタバレなし [ディレクターの目線blog@FC2]
映画 『シェイプ・オブ・ウォーター(日本語字幕版)』(公式)を先日、劇場鑑賞。採点は、★★★★☆(最高5つ星で、4つ)。100点満点なら85点にします。
ディレクター目線のざっくりストーリー
本年度アカデミー賞R 4部門受賞(作品賞、監督賞、作曲賞、美術賞受賞)
1962年、ソビエトとの冷戦下のアメリカ。政府の極秘研究所で清掃員として働く...... [続きを読む]
受信: 2018年3月14日 (水) 18時34分
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映画「シェイプ・オブ・ウォーター」を鑑賞しました。 [続きを読む]
受信: 2018年3月15日 (木) 22時47分
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2017年・アメリカ/フォックス・サーチライト・ピクチャーズ配給:20世紀フォックス映画 原題:The Shape of Water 監督:ギレルモ・デル・トロ原案:ギレルモ・デル・トロ脚本:ギレ [続きを読む]
受信: 2018年3月25日 (日) 15時05分
コメント
こんにちは。こちらにも。
作品賞!オッズ低くとも、一応作品・助演男優・主演女優、全部当たりました。だからなに?な話ですが。いやでも正直この暗黒テイストが受け入れられるかどうかは賭けでしたけれど。作品賞だけでなく監督賞も持って行ったのですよね~。
興奮のアカデミー賞発表当日でした。
投稿: ここなつ | 2018年3月 5日 (月) 17時31分