「ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男」:キュートな頑固親父
映画『ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男』は、かなり面白いチャーチル伝。この型破りの変人宰相を、良い面も悪い面も等価に描いています。 この人、当世だったらすぐにアウトで退場でしょうねえ。それぐらいハッキリと、パワハラであり、朝から飲酒するアル中であり、葉巻を吹かすスモーカーであり、まあ、古典的な頑固親父であり、しょうもない政治家(むしろ政治屋)さんです。でも敵を作りながらも愚直であり、そこがうまい具合に機能したというのが、この映画で描かれている事です。
そんなじいさまなのですが、結構チャーミングでもあり、愛妻家だったりもするので、憎めない所があります(少なくともこの映画においては)。目なんか、ちょっとキュートです。とは言え、民の声を受けて「徹底抗戦」の意思を固めるって、よく考えてみれば結構危険。「民」って言っても、地下鉄に乗ってた10~20人程度の人々の意見だけなんですけど・・・。まあ相手がヒトラーだったから、これで良かったんですけどね。 それはそうと、地下鉄の車内で平然と臭い葉巻に火をつけてくゆらせるので、唖然としました。新生児を抱いた母親も平然としてるし。それだけ、タバコはどこで吸ってもいい時代だったんですねえ。そういえば、日本でも(さすがに車内はダメでしたけど)’80年代(?)頃までは地下鉄のホームでタバコを吸えたんですもんね。
チャーチルを演じるゲイリー・オールドマンは素晴らしいです。辻和弘さんの特殊メイクアップが、まったくもって自然で、お見事です。最初の内は感心して、メイクにばかり目が行ってしまいましたが、後半には慣れて来て、ゲイリーの目を、声を、演技を、十分に味わいました。 この特殊メイクがあったら、アンソニー・ホプキンスも『ニクソン』や『ヒッチコック』で違和感を感じさせることなしに、オスカーに輝いたかも知れなかったのにね。
この作品で描かれてるのって、たったの27日間なんですってね。びっくり。かなり起伏に富んでいて、面白かったです。脚本の良さでしょう。そして陰影に富んだ撮影も、かなり上等でした。
そしてチャーチルのズボンの股上の深さにもびっくりです(いかにもこの時代のオヤジっぽいですね)。
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