「リズと青い鳥」:美しさと静けさと「もののあはれ」
映画『リズと青い鳥』は、『けいおん!』『たまこラブストーリー』『聲の形』の山田尚子監督だってことで、楽しみに観に行きました。TVのアニメシリーズが大もとだってことすら直前まで知らなかったのですが、「イチゲンさんでも大丈夫」との情報を得て、安心して赴きました。
とにかくひたすら繊細です。淡く優しい光に満ちた絵作りもそうですが、それ以上に、この映画で描かれている「ニュアンス」が繊細なのです。少女の心情の揺らぎ、言葉にできない思い、そういったものを丁寧に掬い取って、アニメーションならではの繊細なコントロールで表現している作品です。
そして、この映画に描かれているすべてが美しいのです。美しくないものは周到に排除されていると言っていいかも知れません。「少女なんて、そんなに美しいもんじゃないよ」とおっしゃる向きもあるかと思います。また、男がこういうものを創ると、「それは男目線の幻想」とか言われがちです。その点、本作は原作(武田綾乃)、脚本(吉田玲子)、監督(山田尚子)が三人とも女性なので、心強いものがあります。こういう世界があったっていいじゃないですか。
静かです。そして台詞の間にたっぷりと間(ま)があります。観客にたっぷりと想像する間を与える、すなわち主人公たちと同化させてしまうのです。こうすることで、立ち上って来る心情や、「もののあはれ」があるのです。松竹配給、京アニ製作のメジャー作で、そこに挑んだ山田監督は、評価に値すべきだと思います。
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