「タクシー運転手 約束は海を越えて」:どこまでが事実?
映画『タクシー運転手 約束は海を越えて』は、1980年の光州事件を題材にした娯楽作。本来とてもシリアスな話なのですが、ソン・ガンホを主役に迎え、映画的な脚色をたっぷり施して、いかにも韓国映画らしい「通俗の力」を前面に押し出しています。楽しくも、心に刺さる作品でしょう。
一応事実がベースになっていますし、エンドタイトルには実在したドイツ人記者の映像が流れます。でも観ていて、「これ、どこまでが本当の事実なの?」と思わざるを得ませんでした。それぐらいフィクショナルであり、劇的なのです。
その最たる部分は、終盤の感動的なカーチェイス。さすがにこれはフィクションだと思うのですが、映画的には正しい選択でしょう。 そういった誇張は作品をとおして存在しますし、そういう「通俗化」の作業があってこそ、多くの人々に響く作品となるのでありましょう。
無知でそれゆえ権力側にコントロールされやすい庶民(ソン・ガンホ)が、衝撃的な体験を通じて「気づき」に至るという、啓蒙的な物語です。2時間17分を一気に突き進むパワーが、きちんと宿っている力作です。
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