「サバービコン 仮面を被った街」:トランプへの怒りと・・・
映画『サバービコン 仮面を被った街』は、ジョージ・クルーニー監督作品ですが、脚本がコーエン兄弟らってことで、実にコーエン兄弟テイストの作品。またそこに、コーエン兄弟が敬愛するヒッチコックのテイストも含まれておりまして、予告編を見た感じだとシニカルなブラックコメディだろうと思っていたのですが、だいぶシリアス寄りの作品でした。
本作を通して、リベラル派のクルーニーが声を大にしてぶち上げているメッセージは、ドナルド・トランプ批判。「古き良きアメリカ」とか「輝いていた強いアメリカ」とか言っても、その実態はこういう代物だったんですよ、強烈な人種差別にまみれた、とんでもない時代だったんですよ、と訴えています。確かにこの映画で描かれている白人中産階級層の言動を今の尺度で見ていると、むかつくことばかりです。
美しい郊外の街の一皮下の醜さ、異常さをダーク・ファンタジーとして描いたのが、デイヴィッド・リンチの『ブルー・ベルベット』だとしたら、本作はシニカルなサスペンス・ミステリーとして描いております。 完璧な時代再現(衣装、美術、ヘアメイク)と、名手カイル・クーパーによるメインタイトルの、いわゆる「古き良きアメリカ」も効いています。それ以上に効いているのは、子供の使い方でしょう。
(以降ネタバレあり) 汚れ切った(白人の)大人たちとの対比で、子供のイノセンスが生きて来ます。ラストなんか、ちょっと涙腺に来るぐらい感動的なシーンでした。そしてカメラが引けば、延々と続く(隔てるために作られた)柵。その柵を越えて続くキャッチボール。まさに、「メキシコ国境に壁を作る」とかのたまっている大統領への怒りのメッセージではありませんか。クルーニーのこういう所、好きだなあ。そして、美しいラストシーンだなあ。
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