「アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル」:ドイヒーでポンコツな人々
映画『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』は、パワフルで怪作に近いんだけど、ギリギリ真っ当に成功しています。ただ語り口はコメディ調のニュアンスを含んでおり、かなり笑えます。それはもちろん悪いことではなく、むしろ作品の魅力です。あくまでもフィクショナルな劇映画ですが、(さもドキュメンタリーのような)インタビュー形式を取り入れたり、演者がカメラ(観客)に向かって話したり、いろんなことをやってくれます。
とにかくドイヒーな人、ポンコツな人ばっかり出て来ます。と言うより、そういう環境に生まれ育ち、そこから抜け出すことのできなかったトーニャの悲劇といった物語でもあります。中でも凍り付いた無表情と鬼の心と口汚さとで観る者をも凍り付かせるのがアリソン・ジャネイ演じる毒母! いやー、近寄りたくないなー。娘のトーニャは「被害者」でもあり同情の余地があるのですが、そしてヒゲやデブはただのバカなんですけど、この母親はかなり「諸悪の根源」っぽいですもん。
トーニャを演じたマーゴット・ロビーは、本作のプロデューサーも務めておりますが、いやー、見事な演技でした。だって、自分のイメージを落とすほどのひどいキャラクターを見事にひどく(バカで、ゲスで、ビッチで)演じておりました、。ただの美人女優じゃなかったんですね。お見それいたしました。さらには4か月にわたる特訓で、かなり滑れるようになったというスケート場面の見事さ! 彼女自身が滑れていることが、作品の力となっています。そしてスケートをダイナミックに捉えたこのキャメラの見事さ! テレビで見るフィギュアとは全然違うハードでパワフルなスポーツの迫力がバッチリ出ておりました。
(以降ややネタバレあり) あの「事件」の顛末にも唖然としましたが、その後に訪れるボクサーに転身した彼女の試合場面が効いています。そこにある屈辱、怒り、悲哀、強さ、諦念・・・そういった複雑な感情が、観ているこちらにも迫って来ました。それでも、人生ってもんは続くんだなあ。
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コメント
<とにかくドイヒーな人、ポンコツな人ばっかり出て来ます
この点で、めっちゃ笑いました。
かなりの傑作だと思いましたが、そう感じない方もいて不思議?!
投稿: onscreen | 2018年5月24日 (木) 06時50分
トラックバックありがとうございます。先だっての「さよなら、僕のマンハッタン」の時同様、やはりこちらからのTBが届かないようですので、アドレス欄に「アイ,トーニャ・・」記事URLを入れて投稿します。なかなか見応えの怪作、だったですね。
何年か前、確かcocologへのTBは、届きはしたんですけれど、今同様、当方の編集欄には送信記録が出なかったりで、何か相性が悪いのかも?しれません。
投稿: MIEKOMISSLIM | 2018年5月24日 (木) 23時08分
onscreenさん、毎度どうも。あれはまさに「コメディ部門」ってやつですよね。
MIEKOMISSLIMさん、ありがとうございます。
うーん、TBの愛称悪さ、困ったもんですね。でもこれからもよろしくどうぞ。
投稿: 大江戸時夫 | 2018年5月25日 (金) 22時16分