「それから」:人生だなあ
映画『それから』を皮切りに、ホン・サンス監督×キム・ミニ主演の4作品が連続公開されます。第一走者の『それから』ですが、いやー、素晴らしかった。これまでホン・サンスって特に好きではなかったんですが、これには降参です。韓国のウディ・アレンと言われる彼がモノクロで作った、まさに『マンハッタン』のような作品(物語とかは全く違いますけど、ムードがね)。
登場人物は少なく、場所も限られてる中での会話劇という、いつもながらのホン・サンス節。でも今回は、出来が良いです。不倫をめぐるすったもんだを、実にリアルに、実にオトナな感じで淡々と、時にユーモラスに描き、そこに「人生」を滲ませます。素敵です。おしゃれです。
男女を描いた大人な映画ってことにおいては、成瀬巳喜男作品の匂いもありますね。確かにこの男のダメさやズルさを見てると、森雅之みたいですもん。関係ないけど、不倫相手の女がやけに小保方さんに似ておりました。 そしてキム・ミニがキュートで、独自の魅力を放っておりました。『お嬢さん』でも印象的でしたが、本作では抑制が効いていながら、内面からの光があふれるミューズとして屹立しております。
「それから部分」というか、終盤の後日談パートも、とても効いています。「時間」が効いています。時は流れ、人は移ろうのだなあ、人生だなあって感じ。この成熟。見事です、ホン・サンス。こういう作家が韓国にいるってことは、ちょっとうらやましいことです。
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