「夜の浜辺でひとり」:すごいぞ、ホン・サンス(キム・ミニも)
映画『夜の浜辺でひとり』は、ホン・サンス×キム・ミニ4作品連続公開の第2弾。『それから』に次いで、これもいいです。たまらなく面白いです。やっぱりキム・ミニが輝いてます。
ドイツのハンブルクが「1」、韓国の江陵が「2」という二部構成ですが、「1」が序章という感じで短く、「2」の方が本編という感じで全然長くもあります。
ホン・サンスとキム・ミニは実際にそういう仲なのですが、この映画の中でも監督と女優の不倫関係が描かれます。それがもうおのろけだったり、自虐だったり、自慢だったり、自己憐憫だったりと、リアルに虚実がない交ぜになっていて、とてもスリリングなのです。人によっては腹立たしくなったり鼻白んだりするのかも知れませんが、大江戸はドキドキしながら面白く観ておりました。
『それから』でもそうでしたが、これだけ繊細な映画を作ってるのに、ズームやパンが雑! なんであんなにいいかげんで素人っぽい感じに動かすのか、謎です。 謎と言えばもう一つ、篇中に(ドイツにも韓国にも)謎の黒服男が何度か登場するのですが、あれはいったい・・・? プログラムには「彼女の感情のメタファー」と書いてありましたが、うーん、今一つ成功していないような気がいたします。
長回しで捉えられる飲み会のぐだぐだ会話が、いつでもあれだけ魅力的な場面になるという名人芸においては、ホン・サンスって映画史上で最高峰なのではと思ってしまいますよ。同工異曲を常に高いレベルで見事に見せるってことにおいては、小津安二郎的と言えますし。いやー、これまでそんなに熱心に観て来なかったホン・サンスに、すっかりやられてしまった今日この頃です。
それにしても、まだ明るくて「夜」の浜辺には見えなかったんですけどねえ(「薄暮の浜辺」あたりではないかと・・・)。
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コメント
>それにしても、まだ明るくて「夜」の浜辺には見えなかったんですけどねえ(「薄暮の浜辺」あたりではないかと・・・
作中の浜辺と全く関連付けなかったわけではないと思いますが、原題はウォルト・ホイットマンの「On The Beach At Night Alone」由来で、ホン・サンスはむしろヨンヒを見つめる自身の世界観とホイットマンの世界観をタイトルでダブらせたのではないかと思います。
投稿: | 2019年6月24日 (月) 16時44分
おお、そういうことだったのですね。浅学にして全くわかりませんでした。
コメントありがとうございました。
投稿: 大江戸時夫 | 2019年6月27日 (木) 00時13分