「ビューティフル・デイ」:女性監督のスタイリッシュな暴力性
映画『ビューティフル・デイ』は、スタイリッシュでヴァイオレントでアヴァンギャルドでリリカル。リン・ラムジー監督の前作『少年は残酷な弓を射る』もかなりスタイリッシュで前衛的要素を持った作品でしたが、本作はこういった特色を持つ現代のハードボイルドでありまして、説明的要素を切り捨てて、主人公の行動で物語を転がしていきます。
ただ主人公の行動ってのが単純には描かれず、子供の頃からのいろいろな回想(トラウマ的な)がインサートされたり、行動が断片で時系列に沿わず描かれたり、時間がわかりにくくシャッフルされていたりするので、映画リテラシーの高い人でないと、戸惑う要素満載なのです。
そして多分に『タクシー・ドライバー』です。少女娼婦のヴァイオレントな救出劇ですし、幻想的でもありますし、選挙戦がちょっと絡んでいたりもしますし・・・(車のバックミラーを見るホアキン・フェニックスの目が、『タクシー・ドライバー』のデ=ニーロそっくりな場面もあったりします)。でも使う武器は、拳銃ではなくてハンマーなのです。
こんなにヴァイオレントなハードボイルド映画の監督(リン・ラムジー)が女性であるってことが、けっこう衝撃です。しかも前衛のクォリティがかなり高いのです。この監督、近い将来に(題材さえハマれば)どえらい傑作をものにするかも知れませんね。
それはそうと、小生が嫌いなホアキン・フェニックスですが、本作の彼は異常さが生きておりましたね。 そしてジョニー・グリーンウッドのノイジーでアーティスティックな音楽が、ハンパなく攻めておりました。
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