「女と男の観覧車」:人間国宝の名人芸
映画『女と男の観覧車』は好調の続くウディ・アレン(今年83歳)による、上出来の人間ドラマ。相変わらずお見事な名人芸です。原題は“Woner Wheel”。コニー・アイランドの観覧車の名前ですね。タイトルが『男と女・・・』じゃなくて『女と男・・・』というのは、『女と男のいる舗道』とか『女と男の名誉』とか数えるほどしかありませんが、本作の内容的にはまさに「女」がメインです。それはそうと冒頭、いつものアレン作品のように黒地に白であのフォントのタイトルが出たのですが、何枚目かに英文をかき分けるようにど真ん中に大きな字で邦題が入っていて、たまげました。一瞬何が起きたのか判断できないぐらいの衝撃でした。これ、アレンさんの許諾を得ているのでしょうか?? 別にそんなことしなくたっていいじゃない。
アレン好みの’50年代コニー・アイランドのノスタルジックな時代再現が、美しいカラー映像の中、見事です。ヴィットリオ・ストラート(今年78歳)の撮影が、外景も室内もたまらなく美しいのですが、ことに室内の場面では遊園地のカラフルな照明の色の変化に合わせて、人物の肌や髪が色合いを変えていって、それが状況や心象を補完してもいるという芸の細かさです。 一方、抜けるような青空+浜辺のベンチの絵なんかも最高に素敵でしたね。
お話は実に舞台劇のようなトーンでありました。少しアレンジすれば、そのまま舞台化できそうです。そして、この女主人公(ケイト・ウィンスレット)の「恋に狂った」様子が、なんとも演劇的。大きな芝居をしても、映える役です。『ブルー・ジャスミン』でケイト・ブランシェットに見事な芝居をさせたアレンですが、「ケイト・・・ット」つながりでウィンスレットをキャスティングしたのでしょうか?(まさかね) それにしてもやること成すこと全てがイラっとくるトンデモ女を、堂々と好演しておりました。
主要人物たちの外的&内的葛藤を描くことで、笑わせながら、ハラハラさせながら、こんなに面白い物語を見せてくれる・・・いやー、イーストウッドとアレンって、やっぱりアメリカの人間国宝と言えますよね。
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