「空飛ぶタイヤ」:時間が足りなくて・・・
『空飛ぶタイヤ』は、池井戸潤原作の初映画化作品なんですってね。あれだけテレビではバンバン映像化されていたのに、不思議です。やはりあの山あり谷ありの濃さは、2時間かそこらで消化するのは難しい。連ドラの方が毎回見せ場を作れて、じっくりたっぷり描けて、相性がいいんでしょうね。
だもんで、やはり序盤は「描き足りない」感がたっぷりでした。シーンの一つ一つが短くて、まるで連ドラの総集編を観ているかのようでした。中盤こそ、そこらが気にならなくなりますが、終盤に至るとまたもダイジェスト感が満ちてきます。そこが何とも残念です。 それなのに、本作を前・後篇に分けなかったってことは、ここ数年日本映画界を覆っていた前・後篇二部作の流行が終わりを告げたってことなんでしょうね。
まあ、テレビで見た諸作品同様、池井戸作品らしい勧善懲悪というか、「巨大な権力の悪事を、弱き者が(主に金銭面で)窮地に陥りながらも大逆転で叩きのめす」話です。そりゃあとりあえず面白いし、引き込まれますよ。でも「社会派」というよりは一にも二にも「娯楽」で、それは別に悪いことではありませんが、感動するような深みには至っておりません。それどころか、原作のせいなのか、テレビで見た池井戸作品の方が、とりあえずの感動ってやつは味わえましたよ。
本木克英監督は、これまでコメディー専門かと思っていたのですが(そうでない作品もあるようですが)、本作の交通整理を無難にこなしました。娯楽映画の職人としては、及第と言えるのではないでしょうか。でもあと30分あげたら、もっと面白くしてくれたかも知れないのにね。
エンディングのサザンオールスターズは、なんかとってつけたようで、合っているとは思えませんでしたねえ。
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