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2018年7月25日 (水)

「スティルライフオブメモリーズ」:エロス<タナトス、そして謎

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映画『スティルライフオブメモリーズ』は、矢崎仁監督らしいヨーロピアン・テイストに溢れたチャレンジングで不思議な作品。敢えて言えば「怪作」の領域に踏み込んでいるかと思います。何しろ(女性器の写真を撮り続けた)アンリ・マッケローニの写真にインスパイアされた物語なのですから。そのような写真を扱いながらも両極端ってことで、『素敵なダイナマイトスキャンダル』と2本立てにしてもらいたい気がいたします。

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大江戸は『花を摘む少女と虫を殺す少女』だとか『ストロベリーショートケイクス』だとか、矢崎作品がかなり好きでして、今回も矢崎さんならではの美しい映像や品格が、作品を生かし、高めていました。何しろこの題材ですから、どうしても「下世話」サイドに引っ張られてしまいがちなところを、ほとんど文学的なゾーンに引っ張っているのですから。しかも多くの謎を残してくれています。

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モノクロの硬質な写真自体がそうなのですが、作品の方向性も、エロスよりはタナトスの方に向かっています(ロバート・メイプルソープや荒木経惟の撮る花の写真が、タナトスも含むとはいえ濃密にエロティックな写真となっているのとはかなり異なります)。最後に出て来る長い長いトンネルの映像などは、まさに「エロスよりもタナトス」といった趣きです(リンチの『ロスト・ハイウェイ』を思わせたりもします)。 逆に一番エロティックだったのは、ジャキーンという重厚なシャッター音。この音の凄さには、監督のこだわりを聴く思いがいたしました。

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(以降ネタバレあり) エンディングには、作品内で写真家が撮り続けた設定の作品が次々と現れます。しかしながら、(映倫の判断で)ボカシやら画像処理が施されて、なんだかよくわからない状態になっていました。うーん、残念です。海外の映画祭などに出す時は、意図した状態なのでしょうけれど・・・。モノクロだからってこともあり、決していやらしかったり煽情的だったりはしないのですけどねえ。

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