「焼肉ドラゴン」:濃くて暑くて
映画『焼肉ドラゴン』は、脚本家・鄭義信(61歳)の初監督作品。これまでの脚本作品同様、猥雑でパワフルな人間模様を活写しています。
1970年の大阪万博の前年から始まって1971年に終わる作品。原作の舞台劇は知っておりましたが、観てはおりません。
昭和の、大阪の、いわゆるスラムの空気の中で、在日コリアンの家族と周囲の人々を描きます。焼肉のけむり、たばこのけむり、土けむり・・・と、空気が悪そうです。おまけにやたらと暑そうな・・・。なんだかクレイジーケンバンドの『けむり』が似合いそうな世界です。そんな濃い空間で、やたらと濃い人々が叫んだり、争ったり、張り合ったりするという、いかにも鄭義信ワールドなのです。
最近、NHKの単発ドラマ『あにいもうと』でも物分かりの悪い荒くれ者を演じた大泉洋が、また似たようなキャラを演じております。でも彼と「亀の子ダワシ」と呼ばれるコリアンが、やかんんに入った酒を「ご返杯」「ご返杯」・・・と飲み比べ勝負をする場面の長回しなどは(演劇的で)面白かったです。
真木よう子がさらりと演じていたのに対して、井上真央はドスが効いた怒り芝居と情熱的なキス芝居で、その成長を見せておりました。
ただ、どうにもこうにも末っ子・時生の件りがうまく行ってなくて、死に関しても非常に唐突な感じしかしませんでした。 まあ全体的に、「舞台の方が良かったんだろうなあ」と思えてしまいました。
それはそうと、オカン(イ・ジョンウン)がほとんど朝日新聞連載『ののちゃん』の母親(まつ子さん)の実写版なのでした(笑)。
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