「冬の光」:神の沈黙と観客のいびき
開催中の「ベルイマン生誕100年映画祭」で『冬の光』を観ました。何十年ぶりの再鑑賞です。昔はその難解さに途方に暮れたものでしたが、今は「特に恐れるに足らず」です。もちろん難解と言えば難解ですけれど、それで落胆絶望する必要はなく、自分の中でこのムードやこの厳しさを楽しめる余裕が出て来たようで・・・、人は成長するんですね。
牧師の息子ベルイマンならではの、神をめぐる葛藤。牧師という仕事への迷い、悩み、懐疑。解決は与えずに断ち切るような演劇的終幕も、ベルイマンらしさです。
後半に結構長い屋外場面があるのですが、カメラが屋外に出ることをすっかり忘れておりました。この屋外シーンが効いてますし、スウェーデンの厳しい自然をなんとなくわからせることが、本作においては重要です。スヴェン・ニクヴィストのモノクロ撮影は、屋外も屋内も厳しくも美しく、見事です。 それと、ベルイマン映画って、人間の顔と顔がくっつく印象的なシーンが多いですよね。
先日観た『鏡の中にある如く』の時もそうだったのですが、いびきをかいて寝ている人がおりました。ただ、そういえばこれって昔からベルイマン映画にはつきものだなあと思ったりして、懐かしかったです。神は沈黙し、観客はいびきをかく。 眠くなるような能は、良い能だと聞いたことがありますが、ベルイマンの映画も「能」のようなものかも知れませんね。
| 固定リンク
コメント