「魔術師」:陰鬱な喜劇
映画『魔術師』を「ベルイマン生誕100年映画祭」で、ほんっと久しぶりに再見しました。その昔はこれを「ベルイマン自身が喜劇と呼んでいる」みたいな記事を読んで、えーっ??と思ったものですが、今観てみると、なーんだ、もろに喜劇じゃないですか(人は成長しますね)。ただし、作ってるのがベルイマンですからね。陰鬱な喜劇とか、懊悩する喜劇とかってところでしょうか。
そもそもマックス・フォン・シドウですからね。その上、魔術師っぽくハクをつけるための付け髭やらメイクやらですからね(『フラッシュ・ゴードン』で獅童、いやシドウが演じた東洋的な皇帝を思い出してしまいました)。笑っていいのやらよくないのやら、どうにもわかりません。で、お相手もグンナール・ビョーンストランドですからね。笑っちゃいけないオーラ満載の方です。この二人によるホラー的場面は、一歩間違えるとコントみたいです。でも、ドスが効いていて、緊張感に満ちた撮影(グンナール・フィッシェル)も素晴らし過ぎて、笑えませんですねー。
一方では、ご婦人がらみの艶笑ネタの数々は普通にリラックスして笑えます。楽しめます。ビビ・アンデションのナチュラルな奔放さが、実にいいですね。
ラストなんかは明るいじゃないですかー。こんなに軽く明るく開放感のあるベルイマン作品のラストなんて、これだけじゃないでしょうか(もしかしたら、初期作にはあるのかなあ)? それでも駆け抜けていく馬車の脇の木の枝は、不気味に折れ曲がっているんですよねー(そこがベルイマン)。
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