「愛しのアイリーン」:濃い!
映画『愛しのアイリーン』は、とにかく疲れるほど濃いです。大江戸が大変評価している『さんかく』や『ヒメアノ~ル』や『犬猿』の吉田恵輔監督作品ですが、ウザイ程の密度で、2時間17分を駆け抜けて行きます。
そもそもひげ面の安田顕がやけに濃いですし、フィリピーナのナッツ・シトイも肌色からして濃いわけですし、般若面を思わせる木野花さんがいつになく濃いのです。
伊勢谷友介だっていつも通りに濃いですし、その他の面々もかなり濃いと言って良いでしょう。脇役で印象深かったのは、河井青葉さん。リアルに生々しいですね、この人いつも。 琴美役の桜まゆみさんも、ちょっと独特で面白かったです。吉田恵輔ごのみでしょう。
原作のせいもあるのでしょうけど、吉田監督の作風って、妙なおかしみがあって笑えちゃうのです。実際かなりコミカルな作品だとは思いますが、一方では深い社会性があって、戦慄すべき内容だったりもします。とにかく良い所と悪い所が入り混じった問題作です。世間では本作を今村昌平的と評するむきもあるようですが、なるほど確かにイマヘイ的な社会問題性に溢れる「重喜劇」となっております。
終盤も良い所悪い所入り混じって、一筋縄ではいきません。ヒューマニズムと人間の業の深さが葛藤している感じですし、通俗と非凡がせめぎ合っている感じでもあります。
(以降ネタバレあり) トータルすると、吉田恵輔の中で最上の作品とは言えないかとも思いますが、作中2カ所、「聖なる場面」がありました。岩男とアイリーンが初めて結ばれるところと、終盤にアイリーンが岩男の子供を宿しているとツルに告げる場面です。そこでは、心が震えましたねえ。
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