« 男子サッカー、死闘の果ての銀メダル | トップページ | 『東京150年』と江戸東京博物館 »

2018年9月 2日 (日)

「寝ても覚めても」:恐るべき傑作

361749_002映画『寝ても覚めても』の衝撃度は、観る前は想像もできないものでした。東出昌大と(新人と言ってよい)唐田えりかという雰囲気の希薄な二人の主演だし、あの『ハッピーアワー』の濱口竜介監督だしってことで、しみじみ味わいのある作品にはなっても、こういう方向に行くとは思いもよりませんでした。っていうか、観ている間も作品の7~8割ぐらいが終わるまでは、まさかこう来るとは思いませんでした。今もなお胸にズシリと来ています。心にスクラッチが残る作品です。

361749_001
(以降多少ネタバレあり) 作品の7~8割ぐらいの間も、いいんですよ。かなり素晴らしいです。『ハッピーアワー』のように延々と時間をかけて、登場人物たちがリアルに自分の知り合いみたいに思えて来る演出とは違って、正攻法の端正な演出です。ちょっとゆるゆるしてます。しかし、今回は1時間59分の作品。それでも上映時間の7~8割の時を経て築いてきた我々観客と登場人物たちとの暖かい関係性を暴力的に引き裂くような戦慄が待っているのです。そのあたりはまさにホラーです。『地獄の黙示録』でカーツ大佐が死ぬ時に“Horror・・・horror.”と口にしていたような、絶望的な恐怖。

361749_005

我々の日常や常識を破壊するような恐怖・・・考えてみれば、朝子とスターになった麦が再開した場面での朝子の手の振り方、あれは何か異常でした。もの凄い不安をかき立てるような手の振り方。 そうか、彼女の虫も殺さぬようなおとなしい顔も、ゆるゆるしたテンポも、すべてこの暴走のための布石であったかあ。いやあ、凄い映画です。濱口監督、底知れない才能です。

361749_004

唐田えりかは、新人女優豊作の本年においても、新人女優賞の最有力候補でしょう。そして、小生は山下リオが好きなのですが。本作では彼女も「自己ベスト」級の演技を見せておりましたし、魅力的でした。そのほかの役者もみな素晴らしく、ここにも濱口監督の力量を感じました。

今年のカンヌ映画祭のコンペティション部門に日本から出た二作品のうち、『万引き家族』もパルムドールにふさわしい秀作だと思いますが、大江戸はこの作品に軍配を上げます。人間は不可思議だということが、映画ならではの余白を伴って描かれておりました。

|

« 男子サッカー、死闘の果ての銀メダル | トップページ | 『東京150年』と江戸東京博物館 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/42098/74139835

この記事へのトラックバック一覧です: 「寝ても覚めても」:恐るべき傑作:

» 寝ても覚めても [象のロケット]
大阪。 周りが冷やかすほど仲が良かった、恋人同士の泉谷朝子と鳥居麦(ばく)。 しかし半年後、麦は出かけたまま戻らなかった。 …2年後の東京。 喫茶店で働く朝子は、近所の日本酒メーカーの社員・丸子亮平が麦そっくりであることに驚くが、やがて二人は交際を始める。 朝子は麦のことを亮平には言えずにいた…。 ラブ・ストーリー。... [続きを読む]

受信: 2018年9月 2日 (日) 08時45分

» 「寝ても覚めても」 [お楽しみはココからだ~ 映画をもっと楽しむ方法 ]
2018年・日本=フランス合作 制作:CIエンタティンメント配給:ビターズ・エンド、エレファントハウス 監督:濱口竜介原作:柴崎友香 脚本:田中幸子、濱口竜介 音楽:tofubeats製作:横井正彦、... [続きを読む]

受信: 2018年9月 9日 (日) 15時11分

» 『寝ても覚めても』: 死神に魅入られた女性の話 @ロードショウ・単館系 [キネマのマ ~ りゃんひさ 映画レビューなどなど]
超長尺映画『ハッピーアワー』の濱口竜介監督の商業映画第1作『寝ても覚めても』、ロードショウで鑑賞しました。 『ハッピーアワー』は未見なので、濱口監督作品を鑑賞するのは本作が初めて。 さて、映画。... [続きを読む]

受信: 2018年9月20日 (木) 23時37分

» 『寝ても覚めても』 人間の分からなさ [Days of Books, Films ]
ヒロイン朝子(唐田えりか)がはじめて麦(東出昌大)と会うときも、亮平(東出の二役 [続きを読む]

受信: 2018年9月21日 (金) 17時53分

« 男子サッカー、死闘の果ての銀メダル | トップページ | 『東京150年』と江戸東京博物館 »