「散り椿」:小柄で凛として高潔
映画『散り椿』は、木村大作監督の3作目ですが、一番良いです。監督は「美しい時代劇」を撮りたいと言っていたそうですが、なるほど映像も美しいのですが、それ以上に映画の佇まいが美しいですね。主演の岡田准一のごとく「小柄」ながらも、凛として高潔な作品です。脚本を書いた小泉堯史も同様のテイストの持ち主ですしね。そして終幕の静かな情感が、余韻たっぷりです。
そんなに難しい物語ではないのですが、多くを台詞で語ってしまい、映画としての語り口は上手とは言い難いものがあります。でも、岡田や西島秀俊、黒木華(時代劇が似合う!)ら俳優陣から発散される空気が、その不足を補っています。
ことに岡田准一は、彼のこれまでのベスト演技ではないでしょうか。ヒゲの力もあってか(?)堂々たる貫禄が出て来ました。月代(さかやき)を剃っていない髪型、ヒゲ、黒い着物という外見からも、『用心棒』あたりの三船敏郎を連想してしまいます。と言ってもおかしくない程になってきたのです。エンドクレジットにも「殺陣」として名前が出て来ますが、本当に剣の達人に見える速さと冴えも、さすがです。終盤の殺陣で、「斬る」んじゃなくて、刀を縦に伸ばしてずぶずぶと突くやつが、新鮮でした。そういうの、これまで無かったです。
エンドタイトル(オープニングもだっけ?)に出て来るキャスト、スタッフの名前が、すべてその人の手書き。これも今まで見たことが無かったです。ただ、字ヘタの人にとっては、辛いでしょうねえ。
黒木か麻生久美子の役柄を宮崎あおいにして、夫婦共演で観たかった気がいたしております(それはそれで似合ったでしょうねえ)。
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