「十年 Ten Years Japan」:最初と最後が良作 #十年
映画『十年 Ten Years Japan』(実はメインタイトルには“Japan”なんて入ってませんでしたが)は、香港の先行作と同じやり方で、日本の若き映画人たちが作った問題作。でも問題作と言っても、香港版ほどに政治的ではないというのがもっぱらの評価みたいです(実は小生、香港版を観ておりません)。
28歳から41歳の男女5名の監督が、5つの短編を競作しております。ただ玉石混交の感がありますし、全体的には「弱い」印象を持ちました。こういう時に、「強い」メッセージ性を持たせられないのが、良くも悪くも今の日本人なんでしょうかねえ。
しかしながらトップバッターの早川千絵監督による『PLAN75』は、けっこう衝撃的なテーマを扱って、5作中の白眉でした。(以降ネタバレあり)これ、政府が合法的に安楽死制度を定めた日本というSFなのですが、冒頭の厚生省のTVCMなどは、「確かにこんなの作るんだろうなー」って感じでしたし、首に絆創膏みたいなのを貼るだけってのが、リアルに怖かったです。でも個人的には、(特に病気でもしたら)結構利用したいかも、と思ってしまいました。
でラストの作品『美しい国』(『愚行録』の石川慶監督)もまた、徴兵制度への危惧を前面に押し出したSFとなっています。これは本当に現在の日常と地続きの「ありそうな」未来という恐ろしさを提示しています。広告会社の営業からの視点というのが効いてます。ヒトラーにしても(ゲッベルスにしても)プロパガンダから入ったわけですからね。悪魔は優しい顔で近づいて来る。
この問題提起型の2作に挟まれた3作品が、妙にヤワで、煮え切らない印象になってしまいました。やはりストレートに言うべきことは言った方がいいみたいです(特に短編の場合)。
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