「ここは退屈迎えに来て」:時間と情感 #ここは退屈迎えに来て #廣木隆一 #成田凌
映画『ここは退屈迎えに来て』は、もうほとんど公開終了しているところを、ちょうど時間が合ったので渋谷のアップリンクで観て、良かったです。あやうくこのベストテン級の作品を観落とすところでした。タイトルと違って、全然退屈しませんでした。
2004年/2008年/2010年/2013年と、時間を交錯させながら描く、高校時代から20代後半までの物語。登場人物も多く、それぞれがそれぞれの時間の中で関係のないことをしているので、映画の中頃までは「いったいこれ、どうなってるの?」って感じです。でも後半はきちんとパズルのピースがハマっていきます。そのあたり、やっぱりうまいなあ、廣木隆一。
田舎(と言っても、日本のどこにでもあるような感じの地方都市)を舞台に、高校時代の「青春真っただ中」を懐かしむ30手前の甘酸っぱくもほろ苦い悔恨や諦念。この微かな情感が、何とも素敵で、静かに胸に迫る作品です。描かれた時代を超越した普遍性を獲得していると思います。
廣木隆一監督らしい長回しとロング・ショットがすっごく効果的です。これらのおかげで、実に「映画の絵」になっています。映画的な良いショットは多々ありますが、とりわけ終盤のプール全景を収めた鳥瞰のロング・ショットの長回しなんぞは、人の動かし方といい、デイヴィッド・ホックニーの絵のプールみたいな水紋といい、とっても素敵でした(その後に続く逆光水しぶきショットもいいですねー)。
橋本愛も村上淳もマキタスポーツも片山友希もいいんだけれど、好調の成田凌はここでも評価しておきたいですねー。終盤に登場した際の「落ちぶれちゃった感」が凄いんです。ロング・ショットで一瞬写っただけで、納得させちゃいましたからねー。この人の芝居、大江戸はかなり評価しております。
この作品のもう一つの良さは、人生における「時間(の経過)」を表現していること。時間は人を変え、関係を変え、記憶を変え、後戻りすることはなく、常に止まらず進んで行く・・・とまあ、そんなことをじんわりと感じさせてくれる(しみて来る)作品なのでした。 ラストにおける東京の夕方の空気感と「音」もいいですねえ。
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