「斬、」:重金属轟音サウンドの魅力 #斬、 #塚本晋也
映画『斬、』(ざん)は塚本晋也監督初の時代劇=サムライ・アクション。でも作家の刻印は明確に押されております。冒頭から日本刀の鍛冶の描写で、金属音と火花が飛び散ります。そして全編にわたって鳴り響く暴力的な金属重轟音。この『鉄男 TETSUO』みたいなサウンドが、この作品の50%かも知れません。それほどにパワフルで、観る者をぶん殴るような音響です。ガキーン!! ゴキーン!!
塚本晋也、いい顔になりましたねえ。昔は精神の安定しない小人物といった顔だったのに、どんどん風格のある&風雪に鍛えられた顔になっております。もちろん演技だってうまくなったと思います。 そして塚本組常連の中村達也の面構えが、その迫力が、見事です。
その昔のチャンバラ全盛期と違って、近年のリアリズム時代劇においては、しばしば手や足が(時には首が)斬られ、落ちていきます。考えてみれば、刀で斬るってのはそういうことだよなあ。本当はもっと内臓とかも出ちゃってるわけだよなあなどと思うわけです。本作も『野火』を経た塚本作品だけに、そこらの描写は(暗い画調で抑制を効かせながらも)あります。そのおかげで、「非暴力」「非戦闘」のテーマが強調されるのです。
ただ、成功作かと言われると、うーん、どうでしょう。この終幕もどうなんでしょうねえ。でも塚本作品で成功作ってそもそもあったのかしらん?って感じなので、そんなことどうでもいいのかも知れませんね。とは言え、蒼井優ちょっとわめき過ぎではないかなあ・・・。
『散り椿』が練習になったのか(?)、池松壮亮の殺陣、剣さばきはなかなか見事なものでありました。
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