「ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー」:主役がミスキャスト #ライ麦畑の反逆児 #ひとりぼっちのサリンジャー #サリンジャー
映画『ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー』は、J.D.サリンジャーの伝記映画。昨年公開の『ライ麦畑で出会ったら』といい、2010年のサリンジャーの死後、この手の作品がいくつか作られてますね。これからも作られるのでしょう。ご本人が知ったら嘆くでしょうけどね。それにしてもこの邦題ったら! 近年、副題つきのタイトルが妙に増えてますけど、これなんて会議の席で、「こっちもいいよね。でも、こっちも捨て難いよね。」ってんで、候補案を2つ合わせて作っちゃったんじゃないかって気がしてくる題名です。
本作の原作は、2010年にイギリスで出版され、日本語版も2013年に出た『サリンジャー 生涯91年の真実』。小生も読みました(↓)。
http://oedo-tokio.cocolog-nifty.com/blog/2014/01/91-0df1.html
で、この『ライ麦畑の反逆児』は、サリンジャーの学生時代から隠遁生活に入った頃までの半生を、109分にまとめ上げたもの。なので、「こんな人でした」的なダイジェストになっておりまして、初心者のサリンジャー入門用にはそこそこよろしいのではと思いますが、コクがないんですよねえ。上っ面と言っては申し訳ないですけど、でも、どのパートも踏み込んでないのですから・・・。
ウーナ・オニールとの話も、『ニュー・ヨーカー』誌との話も、戦争の話も、クレイジーなホールデン・ファンの話も、エリア・カザンやビリー・ワイルダーが熱望した『ライ麦畑』の映画化を断った話も・・・、必要なエピソードは全て描かれています。でも、それだけなんです。映画として印象に残る場面などありません。こんなの作ったら、映画嫌いだったサリンジャーに「だから映画なんてもんは・・・」って怒られちゃいそうです。すみません、よく知ってるだけにどうしても辛口になっちゃいますね。
でも一番困っちゃったのは、サリンジャーを演じたニコラス・ホルト。うーん、作家の知性がありそうに見えないんです。サリンジャーの「影のある」複雑で頑固な人間性とは程遠いテイストなのです。小生なんぞは、映画を観てる間ずっと違和感があって、まいりました。若手俳優の中にも、もっと適任者がいたと思われるのです。
サリンジャーのメンターであるウィット・バーネットを演じたケヴィン・スペイシーがやはり、とんでもなく巧かったです。この人を(スキャンダルで)埋もらせちゃったら、映画界は大いなる損失ですよねえ。
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コメント
タイトルは「ライムギ畑でひとりぼっちの反逆児サリンジャーが捕まえられたがってるってよ」で全部入れておけばいいかな。もしくは9章仕立てにして「サリンジャーのナイン・ストーリーズ」。
投稿: ふじき78 | 2019年2月14日 (木) 10時54分
ふじきさん、
前者=ラーメンのトッピング全部乗せじゃないんだから!
後者=なるほど。おしゃれですね。
投稿: 大江戸時夫 | 2019年2月14日 (木) 13時07分