「長いお別れ」:中野量太の愛すべき家族映画 #長いお別れ #中野量太 #認知症映画
映画『長いお別れ』は、認知症をテーマにした上質の作品。中野量太監督は前作『湯を沸かすほどの熱い愛』もかなりの傑作でしたが、本作も甲乙つけがたい素晴らしさです。
認知症を扱った作品としても出色ですが(例えば『キネ旬』ベストワンに輝いた『ペコロスの母に会いに行く』なんかより、ずーっと秀作です。『ペコロス』はなんでベストワンに成れたんだろう?)、それよりもむしろ「家族の映画」です。面倒くささ、わずらわしさも含めての家族の映画。
役者たちを見事に生かすのも、中野監督の力量。前作で宮沢りえ、杉咲花が出色の出来だったように、本作では山崎努と蒼井優がまずはお見事(まあ、もともとうまい人達ですけど)。そして、竹内結子と松原智恵子もいい味出してます。 ただ、山崎さんは現在82歳なだけに、この父親の70歳の誕生日から始まる7年間という設定には、さすがに老けすぎてました。今時こんな老けた70歳はいねーよ、って感じで。
何組かの夫婦を描き、何組かの親子を描き、そしておじいちゃんから孫への継承みたいなものも描く、そのエピソードの一つ一つが心優しくて…、これが中野監督らしさなんでしょうね。 いろんな人がいて、いろんな人生や悩みがあって、でもほっこりできて、笑えて、そして泣ける。山田洋次監督が本作をほめていたのにも納得できます。
(以降少々ネタバレあり) ラストが、本筋とは一番関りの薄い孫がらみの場面だったのも、上質な小説の「エピローグ」のようでもあり、いやそれよりもやはり上質の映画の味わいを出しており、素敵だなあと思いました。上等な脚本(中野量太、大野敏哉)です。
ひとつトゥーマッチな表現でバランスを欠いていたのが、終盤の竹内結子・北村有起哉夫妻のからみ。あそこはちょっと残念でしたねえ。
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