「引っ越し大名!」:ぬるい、ゆるい、すべる。 #引っ越し大名 #松竹時代劇 #高橋一生 #星野源
映画『引っ越し大名!』は、近年の松竹の時代劇--つまりチャンバラ系ではなく、経済系だったり家庭生活系だったりする江戸時代コメディ--の流れに乗った作品(『超高速!参勤交代』とか『武士の家計簿』とか『武士の献立』とか『殿、利息でござる!』のお仲間ですね)。それにしても、この時代(どの映画会社の作品であろうとも、どこの系列のシネコンにもかかる)においても、映画会社のカラーって出るものなんですね。これは松竹映画以外のなにものでもないですもんね。
で、犬童一心が監督したこの時代劇なんですが、うーん、大江戸はダメでした。面白さが弾けきれず、なんだか「ぬるい」んです。おまけにテンポも物語も「ゆるい」し。その上、ギャグが結構「すべる」んです。ミュージカル調に処理した部分などは、えらく中途半端でセンスがよろしくなかったのです。観てて、ちょっと恥ずかしかった。そんな変わったこと、しなけりゃいいのに。
主役の星野源は、まさにいつもの星野源。それ以上でもそれ以下でもない星野源。そして、すっかり松竹映画の専属化している高畑充希の芝居も、悪くはありません。他の役者たちの芝居はえらくステレオタイプ。そこらも松竹的と言えば言えるところでしょうか。
で、見ものなのが高橋一生。いつもの優(やさ)男的イッセイではなく、豪放磊落なワイルド・イッセイを演じてます。犬童監督のアドバイスもあり、高橋は三船敏郎を意識して演じたそうですが、なるほど、これは三十郎ですね。とても合点がいきました。台詞回しも仕草も立ち回りも、実にミフネです。でも、それが(普通ムリだろ、と思いますけど)意外と無理なくうまくいってて、彼の芝居の新しい面を見せてくれました。
やりようによっては、もっと面白くできた作品だったと思います(もっと引っ越し実務のノウハウ部分を強調すべきだったのでは?)。いろんな要素を欲張りすぎて、あぶはち取らずになってしまったんじゃないかなあ。
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