「蜜蜂と遠雷」:音の映画、顔の映画 #蜜蜂と遠雷 #松岡茉優 #石川慶 #音の映画 #顔の映画
映画『蜜蜂と遠雷』は、原作者の恩田陸がベタ褒めしたのもうなずける秀作。何と言っても、音楽へのリスペクトに溢れているのがいいですね。ピアノ・コンペティションの映画というとリチャード・ドレイファス主演の『コンペティション』(1980年)がありますが、むしろ本作の方が勝っていると思います。
特にハッタリをかけたりはせずに「普通に」描くのですが、撮影にしても音響にしても演技にしても演出にしても、すべてが上等。上質の娯楽映画に仕上がっています。前作『愚行録』には今一つ乗れませんでしたが、石川慶監督、非常に良い仕事をしました。盛り上げよう、泣かせようとはしていないのに、中盤以降は結構泣かせ所が多くて、松岡茉優の演奏場面など、結構泣けましたねえ。
予告編や広告では松岡茉優、松坂桃李、森崎ウィン、鈴鹿央士が4等分の扱いなのですが、本編を観るとはっきりと松岡が主役でした。堂々と主役芝居をやってます。やはりうまい人です。 元天才少女の心の傷と葛藤、そして復活の物語。王道の物語展開ですが、実際に音楽が、ピアノが聴こえるというのが映画ならではの強みです。恩田陸さんも、この音にやられちゃったんでしょうねえ。もちろん、松岡はじめ役者陣の健闘も大いに貢献しています。
演奏シーンの撮り方は普通。つまり、多くの場面ではスタントダブルが手先のアップや後姿などで使われ、カット割りでそれらしく見せているわけです。『コンペティション』のドレイファスみたいに、猛練習で自分で超絶演奏をやっちゃうわけではありませんが、別にそれでいいんです。いくつかのシーンでは実際にある程度の演奏をしていましたし、それで十分です。
今はi-padに楽譜を入れて、ペダルと連動させてページが替わる…なんてことができるんですね。譜面めくりの人がいらないのですね。本作中で、森崎ウィンがそれをやっておりました。
この映画の完成に向けて、この世界の実現のために、その質を上げるために、多くの人々が相当な努力をしていることでしょう。とりわけ「音」の面では。なんか、そんな気になってしまった作品です。見事な音楽映画です。
そして、「顔」の映画でもあります。人物の顔のアップがえらく多いのです。そして、顔(表情)にいろんなことを語らせています。 音と顔、まさに小説を映画化するにあたって、石川監督がこれらを戦略的に生かし切ったということなのでしょう。
だから、できるだけ音響の良い劇場で観るべきです。感動が違ってくることと思います。大江戸は新宿バルト9の「ドルビー・サラウンド7.1」で観ましたよ。
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