「惡の華」:正しく美しい青春変態映画 #惡の華 #悪の華 #玉城ティナ #井口昇 #秋田汐梨
映画『惡の華』は、ぶっ飛んでました。いや、素晴らしかった。「深く感動できる変態映画」ってことにおいて、塩田明彦監督の『月光の囁き』以来の傑作です。
そしてそれは、玉城ティナが演じた主人公=仲村さん(と伊藤健太郎が演じた春日)の造形の素晴らしさによるものが大きな要因です。仲村さんの嵐のような激しさの内にある狂気と哀しさが、本作に深みを与えています。そして春日の、自分で自分をコントロールできない「どうしようもなさ」もモヤモヤと感銘を同時に与えてくれます。 二人とも苦しいんです。その魂の深い所での結びつきを描いて、秀逸です。正しい青春映画です。正体のわからない悶々との戦いなのです。
井口昇監督の映画って、あまりにdisgustingなテイストがあって(しばしばスカトロ趣味まであって)、大江戸は好きになれませんでした。なので近作はほとんど観ていませんでしたが、キラキラ映画まで手掛けるうちに角が取れて来たのでしょうか? この作品では、全然過去のバッドテイストとは違っていました。これはいいです。激しさと哀しさと甘美さをないまぜにした演出が、ある種の青春ノスタルジア的な感興をもたらしています。登場人物への愛もあるし…。
「悪魔と天使」のように描かれる仲村と佐伯さんですが、この佐伯さんに抜擢された15歳(撮影当時)の秋田汐梨が実に素人っぽくていいですね。美人ってタイプじゃないけれど、クラスに一人か二人のかわいい子って感じにうまくハマってます。後半に見せる変貌した表情なども見ものです。こういう子を使うことにおいては、もう井口監督さすが!としか言いようがありません。 もう一人、別のタイプとして登場する飯豊まりえも、悪くありません。
今年の玉城ティナは、蜷川実花監督の『Diner ダイナー』に次いで本作と、当たり年です。『Diner ダイナー』では、人形のような美しさが只事ではなかったのですが、本作ではクールなメガネ美人でありながら、悪魔のような形相からふにゃっとした笑顔までを使い分けて、演技的にも健闘しています。大したもんです。
ラストの波打ち際なんて、なんてすがすがしく美しいんでしょう。間違いなく、今年の日本映画の収穫の一本です。 ボードレールの『悪の華』、未読なんで読まなきゃ。
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