「i 新聞記者ドキュメント」:集団と個 #i #新聞記者ドキュメント #望月衣塑子
映画『i 新聞記者ドキュメント』は、劇映画『新聞記者』と表裏一体をなすドキュメンタリー。あの東京新聞社会部の望月衣塑子記者を、森達也監督が追い続け、そこから現在の日本の政治とメディアのおかしな状況を浮かび上がらせます。
エネルギッシュで空気を読まずに突撃する望月さん。しかし、彼女を跳ねのけたり、のらりくらりと交わしたりする菅幹事長をはじめとする権力側に対して、だんだんと苛立ちや怒りが募っていきました。厄介なヤツだろうけど、これはないんじゃないの?という…。
それでもメディアの中に、彼女の同調者や共闘者が現れないのはどういうことなのでしょう? 確かに政治部のスタイルとは違うやり方なのでしょうけれど、菅さんサイドの明らかな嫌がらせや弾圧に声を上げず、問題にしない人たちって…。ほとんど望月さんがドン・キホーテになってしまっているのですが、一方では外国人記者は彼女の行動を当然のこととして捉え、(時々画面に登場する)森監督は「記者として当たり前の事をしてるだけなのに、なんで注目されなければならないのか?」と語ります。おかしなことです。政治の驕りであり、メディアの劣化であると言えるでしょう。
一方でネット世界での彼女への非難中傷や脅迫も存在していて、もう一方ではそんな彼女には(お弁当を作ってくれるような優しい)夫も、まだ小さいお子さんもいることが示されます。出る杭で居続けるのはタフなことです。自分にはできないと多くの人が思うのではないでしょうか? 大江戸は思いました。
森友学園の籠池理事長夫妻も登場しますが、理事長夫人のコテコテの「大阪のおばちゃん」っぷりには笑っちゃいます。決して悪い人たちじゃないのでしょう。やろうとしていた教育にはまったく賛同できませんが(同じことをやはり本作に登場する前川喜平氏も言ってました)。それと、「日本会議」の存在を取り上げたことも(当然と言えば当然なのですが)画期的と言えば画期的なのではないでしょうか。
やっぱり日本人って、良くも悪くも「個」ではなくて「集団」で生きてるんですよね。だから彼女のような「個」が、異端に見えてしまうのです。一番極端な例としては、戦争において集団になじまない「個」は抹殺されてしまうではありませんか。「個」を圧殺するような力や空気に対しては、一人一人が心して対峙しなければいけないのだと改めて感じました。一人一人が何センチかだけでも、良い方向に動かして行かないと。そのための勇気を、少しは絞り出さないといけませんね、望月さんを見倣って。
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