「幸福路のチー」:私たちと同じ #幸福路のチー #台湾アニメ
映画『幸福路のチー』は、台湾の長編アニメーション。公式サイトによると、「アニメーション産業不毛の地、台湾から突如生まれた」作品なのだそうです。実際、世界中でいろんな賞を獲っていますし、思った以上に素晴らしい作品でした。
絵は素朴というか大らかというか、精巧さや細密さとは対極のマンガ映画。小学生時代の主人公たちは、ほとんど『ちびまる子ちゃん』の世界です。男の子も女の子も、あんな感じ。お父さんやお母さんもあんな感じだと言えるでしょう。日本と台湾って似てますねえ。
そう、この映画、全編を通して「日本と台湾の人間って、思考もやる事も似ている」と痛感させてくれます。主人公の女性は1975年生まれという設定なのですが、風景や学生運動などの事件も含めて、日本だともっと前の世代と共通する部分も多いでしょう。でも最終的には、どの世代にも共通する普遍的な「人の営み」に着地しているあたりが、この作品の素晴らしさです。しみじみと、「ああ、おんなじだなあ」と思ったり、「あるある」「わかるわかる」と感じたりしながら、共感し感動するのです。
それにしても、政治的な変遷と社会的な事件や大地震、果ては9.11までもを背景に描きつつ、それら台湾の近代史という流れに重ねて、一人の女性とその家族や友人の生を描いていくという、ある意味「重い」話を、ほんわかしたアニメの絵で表現することによって、楽しく軽やかに進行していくというこの作品、いいです。感銘を与えてくれます。なんだか『この世界の片隅に』に似た方法でもありますね。また、家族をはじめ描かれる人々がみんなちょっとヘナチョコなキャラクター付けをされていて、そこらへんもこの作品の味やメッセージになっております。
監督・脚本のソン・シンインは、1974年生まれの女性です。きっと自分の事も反映させているのでしょうね。
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