「テリー・ギリアムのドン・キホーテ」:油の抜けたギリアム #テリーギリアム #ドンキホーテ
映画『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』は、巨匠の構想から30年、最初の撮影から20年に及ぶ、人呼んで「呪われた作品」だったのですが、遂にできちゃいましたねー。できてしまえば他の作品と同じ1本、ってことで、ありがたみもどんどん薄れていきます。
大江戸は『ロスト・イン・ラマンチャ』('02)を観ておりますので、最初のジャン・ロシュフォール主演版のゴタゴタを知っております。それだけに、よく完成にこぎつけたという感慨はなくもないですが、一方では「あ、こんなもんですか?」っていう物足りなさも満ち満ちておりました。
テリー・ギリアムもなんだか油が抜けて、普通になっちゃいましたね。「圧倒的な映像」なんてものには、お目にかかることができませんでした。中世の宮廷だとか甲冑姿の騎士だとか巨人だとか、ギリアム好みのアイテムは出て来るのですが、その映像にクセやパワーがなくってね。これじゃあギリアムが作ったことの意味がないではありませんか。
でも死んで腐ったロバなんてのは、スペインつながりでブニュエルの『アンダルシアの犬』へのオマージュだと思います。
ドン・キホーテを演じるジョナサン・プライスはなかなかいいですよ。哀愁と狂気のボケ爺いっぷりが、堂に入ってます。一方でサンチョ・パンサにされてしまったCM監督役のアダム・ドライヴァーは、達者なところを見せております。今、旬の役者ですからね(あんまり好きではありませんけど)。
いずれにしてもこの作品、あんまり面白くないのです。そして2時間13分と、結構長いんです。1時間50分もあれば十分な作品ですよ。そこらへんも作品が薄まっちゃった理由の一つでしょうし、油の抜けたギリアムなんて干物みたいなもんですから、あんまりありがたくはないんですよねえ。
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