「シュヴァルの理想宮 ある郵便配達員の夢」:自分、不器用ですから… #シュヴァルの理想宮 #ある郵便配達員の夢
映画『シュヴァルの理想宮 ある郵便配達員の夢』は、19世紀末~20世紀初頭にかけてフランスの片田舎に、たった一人で「宮殿」を築き上げた男の話。しかも本業の郵便配達は、毎日32㎞も歩いて続けながらですよ。これが実話で、現在も観光名所になっているってんだからびっくりです。大江戸は浅学にして、全く知りませんでした。
で、この郵便配達員が随分寡黙で不器用な人。高倉健というにはヘナチョコすぎるんですけど、「男は黙って…」であり、意志の人でもあります。ま、相当な変でもあるわけですけれど…。
天啓に突き動かされたかのように、突然愛娘のために宮殿を作り出すとっぴょうしもなさ。しかし、最初は反対していた妻も、だんだん認めるようになり、娘自身も喜んでくれているようで、家族愛的な物語展開が続きます。その後に悲劇が訪れるのですが、それを乗り越えて33年がかりの奇想建築は完成に至るのです。
アンコールワットからヒントをもらったりもしているようですが、「素朴派」と言われるように、子供のような自由さに満ちた建築です。この何でもありなゴチャゴチャ感と有機体的生命感は、ガウディに近いとも言えるでしょう。
主役のジャック・ガンブランも、奥方役のレティシア・カスタも好演です。そして、娘アリス役のゼリー・リクソンがかわいくて利発そうで結構ですね。
変人の執念の物語とは言え、『フィツカラルド』みたいな妄執の方には進まず、しっかりと家族愛の物語になっていて、人生を通して時間をかけてやり抜くことの貴さを描くのが本作。絵はがき用の写真に一緒に写してもらうシュヴァルの、照れながらも誇らしげな姿に、観ている我々もこの人を好きになってしまうのです。
ラストで初めて全景が見えるこの「ヘンテコ宮殿」、面白いですねえ。行ってみたいなあ。
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