「ラストレター」:美しさとロマンティシズム #ラストレター #岩井俊二 #森七菜
映画『ラストレター』は、もうザ・岩井俊二ど真ん中の傑作。ああ、なんて美しいのでしょう。なんて心震わせるのでしょう。そう言えば、岩井俊二が実写映画で少女たちをたっぷり撮ったのって、『花とアリス』(2004)までさかのぼるのではないでしょうか。故郷の宮城県を舞台に、得意中の得意の題材で、脚本・監督としての力量を存分に示しました。「物語」の面白さで、ぐいぐい見せていきます。
冒頭から美しい幅広の滝です。ラストも同じ滝です。滝好きの大江戸としては、それだけで嬉しくなってしまいます。いい滝ですねえ、これ(宮城県刈田郡の滑津大瀧)。
俗に恋愛に関して「男は『名前を付けて保存』、女は『上書き保存』」って言われますけど、岩井俊二映画は常に男性原理で展開しますね。出て来る男の人が過去の恋の思い出を大切に愛おしむだけでなく、女性も過去の恋を忘れずに、本作でも手紙を大切にとってあったりするわけです。まあ小生は男なので、そういう岩井俊二のロマンティシズムが大好物なのです。
それにしても二つの時代が錯綜する複雑な話を、一人二役とか使いながら展開させるものですから、かなりトリッキー。それが意図的な目くらましになる部分と、こちらの理解度が追いつかない部分と相まって、「??」となる場面もありました。まあ、終わってみれば「お見事」というしかないんですけどね。
(以降ネタバレあり) それにしても『Love Letter』(1995)の四半世紀後に、こういう進化系を作っているわけです。そしてあの作品の二人=中山美穂、豊川悦司をこんな形で使うとは! いやー、それまでの会話から「阿藤ってどんな怪人なんだろう?」と思っていたところにトヨエツだったんで、驚きと同時にドンピシャ感ハンパなかったです。
福山雅治と神木隆之介、松たか子と森七菜がそれぞれ互いに似せてます。あ、この人がこうなったのねって事への納得感があるってのは大切ですね(日本映画の場合、ここがおろそかなことが多いのです)。 森七菜の普通っぽさのリアル、いいですねー。さすがは岩井さん。
やっぱり(電子ではなくて紙の)手紙っていいもんですねえ。『Love Letter』に次いで、またもそれを感じさせてくれた岩井俊二。日本郵便から表彰してもらってもいいのではって感じです。
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