「茶聖」伊東潤:ドラマの深さと娯楽性 #茶聖 #伊東潤 #千利休 #利休と秀吉
この2月に刊行された伊東潤『茶聖』(幻冬舎)を読みました。本文7~519ページの長編。千利休と秀吉の確執をめぐるエンタテインメントです。これまで何冊もの利休小説を読んできましたが、本作はエンタテインメント性において一番かも知れません。
利休の行動原理を「(戦乱を遠避け)世の静謐を求める」ということに絞って、それゆえに秀吉と対立したという解釈が、これまでのどの解釈よりもわかりやすく得心できるものでした。それゆえに危険な橋を渡り、それゆえに命まで賭けたわけです。秀吉と利休の丁々発止のやり取り、言葉の裏の本心の読み合い、互いへのあてつけ…いやー、面白い。小説の力を見事に生かしました。これ、映画化されるんじゃないでしょうかねえ。人間ドラマの深さとエンタテインメント性がしっかり両立していますので。
難ありとまでは言いませんが、ちょっとどうかなと思ったのは、冒頭に切腹を持って来て、ラストがその手前まで(+数行の切腹後)という構成。普通に切腹ラストで良かったんじゃないかなあと思いました。
いずれにせよ、伊東潤さんの骨太にして流麗な筆でぐいぐいと引き込まれ、読み進みました。見事な「お点前」でした。
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