クリスト逝く #クリスト #クリストとジャンヌクロード
現代美術作家のクリストが84歳で亡くなりました。愛妻であり、長きにわたる創作上のパートナーでもあったジャンヌ=クロードが2009年に74歳で亡くなってからは、あまり新作の話も聞かなかったのですが、来年にパリ凱旋門の梱包を予定していたのだとか(このプロジェクトは実行されるそうです)。
クリスト(&ジャンヌ=クロード)の作品は、梱包アートということで有名。まずは小さなものから、そのうちにパリのポンヌフ(橋)、ベルリンのライヒスターク(国会議事堂)などの建造物、果ては谷やら島やらまでもラッピングしてしまいました(ま、この本の表紙にもなっている島に関しては、梱包ではなくて、島の周りをピンクの布で囲んだんですけど)。
彼らの作品は「アート」というより「プロジェクト」と言われることが多いんです。そりゃそうですよね。一つのプロジェクトに数年から十数年の歳月を費やして、現地の人々や自治体、省庁などとの交渉、折衝、説得を経て、計画、計算、実験、開発、土木、などなどを経て、ようやく数日~十数日のインスタレーションが現れて消えるのですから。ほとんど「セミの生涯」みたいです。でも、だからこそ数日だけ現れる完成品の美しさやセンス・オブ・ワンダーは、この上なく素晴らしいアートたり得ているのです。そして、とっても平和な光景なんです。
日本人である我々になじみ深いのは、茨城県の片田舎とカリフォルニアで同時開催された「アンブレラ」プロジェクト(1991)でしょう。大江戸も行きました! 京成線で水戸まで行って、そこから乗り換えて、そしてバスに乗ってようやく着く田園地帯。雨も降る中で、コンクリート台座の大きなアンブレラが点々と立つ風景。途中で会ったアメリカ人4人をガイドしてあげて、上野まで一緒に帰ってきたものでした。その時の写真と、一切れずつもらえたアンブレラ素材(ナイロンか何か)のきれっぱしがどこかにあるはずなんですけど、さっき探しても見つかりませんでした。無念。
昔、彼らのドキュメンタリーを見ましたが、その準備や交渉のめんどくささ、入念さには気が遠くなる思いでした。建築技師のようでもありました。ランドアート数々あれど、クリストほどの規模とぶっ飛んだ発想で、実現させ続けた人はいません。しかも、スポンサーは一切つけずに、全費用をプロジェクトのスケッチや絵画のリトグラフなどを売って得た収益でまかなっていたというあたりにも、唸っちゃいます。 合掌。天国でジャンヌ=クロードと仲良くね。
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