「人間の時間」:多層的な寓話 #人間の時間 #キムギドク #藤井美菜
キム・ギドクの新作『人間の時間』は、東京地区では新宿シネマートのみの単館公開。英語題は、“Human, Space, Time and Human”。まるで彼の過去作『春夏秋冬そして春』を思わせる哲学的なタイトルです。でもその描写は目いっぱい下世話でエグイです。R-18+ですし。なんか石井輝夫みたいなテイストです。でも、大江戸は嫌いじゃないですね。キム・ギドクのこういう、相変わらずの問題児感。こりゃー、賛否分かれること請け合いです。
およそ2時間の映画が4つのパートに分かれてまして、それぞれのパートの章題が画面右下に韓国語で示されます。ざっくりと「人間」が30分ぐらい、「空間」が50分ぐらい、「時間」が30分ぐらいで、「そして人間」が10分ぐらい。
とにかく「寓話」です。しかも単純な寓話ではなく、非常に多層的。様々なレイヤーで読み解くことができます。権力者と民衆の問題、国家同士の問題、支配と被支配の問題、人間の本質とは、正しい暴力とは、悪とは、神と人、タネ、箱舟、アダムとイブ、etc. とにかく浅くも深くも読める寓意だらけなのです。アンパンマンが自分の頭をちぎって、「アンパンをどうぞ」と渡すみたいな場面もありましたしね。
娯楽映画としても面白く、そして悪意と残酷さに満ちた寓話として、おなかいっぱいになります。ラストなんかも、「人間ってやつは…」と嘆息したくなります。で、中盤で船が空中に漂っているところなんかは、なぜか『ウルトラQ』の「206便消滅す」を思い出したりしちゃいました(だったら、トドラみたいなもんまで出してくれたらサイコーだったのに…)。
それにしても謎なのは、オダギリジョーと藤井美菜は日本語で、他の人たちは韓国語で話しているのに、互いに通じ合っていること。そこもまた、何かの寓意ですかね? そして、藤井美菜は何か月たとうが、いや十数年たとうが、メイクばっちりなのでありました。
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