「ソワレ」:社会問題を通して個を描く #ソワレ #村上虹郎 #芋生悠
映画『ソワレ』は、’70年代の日活(にっかつ)一般映画やATG映画、その流れを汲む’80年代の一部の日本映画が持っていた香りをまとった作品。ロードムービーでもあります。アメリカン・ニューシネマの匂いもありますね。
テーマ的には社会派です。性暴力(それも近親間の)、オレオレ詐欺、介護といった問題を、社会の中のマクロ的視点ではなく、あくまでも個の問題としてミクロの視点で描き出します。今年40歳にして、本作が長編デビュー作となった外山文治監督(脚本も)は、邦洋の映画的遺産を下敷きにして、しっかりした映画を作り上げました。カメラマン(池田直矢)の手柄かも知れないけれど、海辺の二人をロングショットで捉えた絵のサイズ感は、よく見る構図よりも更に引きの絵になっていて、そこにセンスを感じました。
村上虹郎は、いかにも彼らしい役柄なのですが、対する芋生悠が新鮮。当世なかなかいないタイプで、その個性やリアリティが輝きます。今後に注目しておきたいと思います。
作品全体としては、今一つ弱いんですけど、もっと圧倒的に心を締めつけてくれたらとも思うんですけど、つまりもっと名作にでき得た可能性を夢想したりするのですが、まあこれはこれで今日び貴重なタイプの映画です。こういう作品が常に作られ続ける日本映画界であってほしいと思います。そういった意味では製作に携わった豊原功補と小泉今日子は、いい仕事をしましたね。
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