「異端の鳥」:生きる #異端の鳥 #映画異端の鳥
映画『異端の鳥』は、チェコ/スロヴァキア/ウクライナ合作でモノクロ2時間49分の力作。事前に「ヴェネツィア映画祭で途中退場者続出」とか「残酷で正視に堪えない場面が多い」みたいなことを聞いていたので、どんなに酷いのかと思っていたら、肩すかしというか、特段の残虐描写はほとんどありませんでした(目玉の件りぐらいですかね)。
ただ、人間の本性としての「悪意」「残酷さ」は全篇を通して描かれていて、そこらへんのいたたまれなさが心にのしかかってくるのです。
台詞は極めて少なく、台詞で物語を説明しようとはしておらず、あくまでも映像で物語を伝えています。その徹底ぶりは、ほとんど「セミ・サイレント映画」といった趣きです。後年、この映画を観ただけで「何年ごろの作品か?」と問われて、正解を答えられる人は少ないことでしょう。
人間は残酷なものであり、環境に追い詰められるほど(例えば戦時下)それが噴出しやすいということなのでしょうが、この少年の「地獄めぐり」の凄まじさは、確かに衝撃的です。ここから私たちは何を学び取れるのでしょうか。
“The Painted Bird”という原題の意味が明らかになるシークェンスでは、少年と「色を塗られた鳥」との相似に唸らされます。そして、残酷なのは人間だけじゃない。動物もだ。生きるものの本質なのだと気づかされるのです。しかし、何があってもこの少年は「生きる」のです。それもまた、命があって生きるものの本質なのでしょう。
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