「タイトル、拒絶」:悲しい時代の群像劇 #タイトル拒絶 #山田佳奈 #伊藤沙莉 #行平あい佳
映画『タイトル、拒絶』は、伊藤沙莉を中心とした群像劇。最初は端役なのかと思っていた人たちも、終盤に向かうにつれて、それぞれの個性とそれぞれのドラマを見せてくれます。そこが美点。よくぞこれだけ、一人一人をちゃんと描いてくれました。そして、デリヘルの女の子たちの待機部屋が主な舞台で、人物の出し入れとかがやけに演劇的なテイストだなあと思ってたら、これ山田佳奈監督が舞台で上演した作品の映画化なんですってね。
伊藤沙莉は決して主役ではなく、むしろ彼女がいちばんドラマティックからは遠いところにいます。他の女の子たちや男たちのいろいろとヤバイ人生に較べると、あまりに手応えがないキャラクター。もちろん、狙いなのでしょう。垣松祐里、佐津川愛美、森田想、片岡礼子、モトーラ世理奈…一人一人のキャラがきちんと立って、それぞれの人生を(謎の部分も含めて)突きつけてくれます。よくできた脚本と演出だと思います。
特に垣松祐里はがんばったけど、彼女とモトーラが姉妹だって…たとえ父か母が違ったとしても、ありえません! 顔の系統が全く違いますもん。大江戸は、そういうところが気になっちゃうんです。 片岡礼子さんは、近年復活して以来一番の役、一番の芝居じゃないでしょうか。 そして、静かで真面目でインテリで気の小さそうな(でも何考えてるかよくわからない)女子を演じた行平あい佳が印象的でした。こういう場違いな人を一人潜り込ませることで、随分と幅がでますよね(大江戸はこういう人けっこう好きです)。
いろんな人間の会話や衝突を通して、人と人との関係だとか現代だとか人間の本質だとかが浮かび上がってきます。みんなそれぞれ、いろんなものを抱えて生きているのですね。悲しい時代です。まあ、「現代の娼家」みたいな場所の話ですから、ある意味古典的というか普遍的な物語を語れるのかも知れませんね。物足りない点もありますが、良い作品でした。
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