「朝が来る」:聖なる傑作、そして永作博美の名演 #朝が来る #河瀨直美 #永作博美 #主演女優賞候補
映画『朝が来る』は、コロナのために中止となった今年のカンヌ映画祭の「公式選出作品」に選ばれ、先ごろアカデミー賞の外国語映画部門の日本代表にも選出された作品。今年の各ベストテンの上位を狙う作品でしょうし、大江戸のテンにおいてもかなりの有力馬です。 6月5日の予定が10月23日に延期になっての公開です。
河瀨直美監督らしく、セミドキュメンタリー・タッチの場面が多く、俳優たちの演技や撮り方もその流れに沿ってナチュラルです。さらには風景や自然や生物を描いたインサート・ショットも多く、この地球のどこかで起きている、私たちの物語という普遍性を与えています。そして、映像表現が映画として豊かです。原作は小説ですが、映画の話法や特質によって多くの感銘を与えてくれます。時制の操作も、混乱を招いたりすることはなく、しっかりと効果を上げています。全体的に素晴らしい出来栄えだと思います。
俳優たちも素晴らしく、中でも永作博美が圧巻です。今年は、『喜劇 愛妻物語』の水川あさみ、『星の子』の芦田愛菜と本作の彼女が大江戸の主演女優賞候補です。世間的には、そこに『MOTHER』の長澤まさみや『スパイの妻』の蒼井優あたりも絡んでくるんでしょうから、激戦ですね(これから公開ですが、『おらおらでひとりいぐも』の田中裕子もそうなんでしょうね)。でも、永作さんはもともと天才的にうまい人でしたが、本作ではとんでもない領域に達しています。あの最後の表情とか。
終盤はやはり泣かされますし、エンドロール終了後の黒い画面にかぶさる男の子の一言で、ダメ押し的に泣かされます。でも、決して「泣かせ」映画として撮っているわけではなく、人間と日本の現代社会を丁寧に描いています。併せて、女性とか母性とかについても。その手際が鮮やかなのです。
「聖なる映画」となっています。『鬼滅の刃』猛ヒットの陰で、2週目にして上映回数も少なくなっておりますが、できるだけ多くの人に観ていただきたい傑作です。
| 固定リンク
« 「空に住む」:気持ち良さと気持ち悪さの同居 #空に住む #青山真治 #多部未華子 #高橋洋 | トップページ | 「とんかつDJアゲ太郎」:とんかつ食べたくなります #とんかつDJアゲ太郎 #アゲ太郎 #二宮健 #とんかつ食べたい »
コメント